【セルフ療育】TEACCHで自閉症・アスペルガーの子供を療育支援

発達障害の一つに含まれる自閉スペクトラム症の療育方法として有名な「TEACCH」について解説をしていきます。療育方法は様々な物がありますが、自宅でもすぐに取り入れることが出来る療育方法なのでお勧めです。自宅で出来る療育を「セルフ療育」と表現しています。気軽に取り組んでみましょう!

TEACCHは代表的な自閉症・アスペルガーの療育手法

「TEACCH」は、アメリカのノースカロライナ州で実施されている、自閉症などコミュニケーションに障害がある子どもたちや、その家族に対する包括的対策プログラムの名称です。TEACCHは下記の9つの理念に基づいて包括的に取り組まれています。

  1. 自閉症の特性を理解する
  2. 親と専門家の協同を重視する
  3. 治癒ではなくよりよい生活をゴールとする
  4. 個別に正確な評価を行う
  5. 構造化された指導法を行う
  6. 認知理論と行動理論を重視する
  7. スキルを伸ばし弱点を受け入れる
  8. ジェネラリストモデル
  9. 生涯にわたり地域に根差した生活を送る

ちなみに、この療育方法が日本で導入されたのは、およそ30年ほど前だと言われています。

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TEACCHは様々なプログラムが用意されている

TEACCHでは様々なプログラムが用意されており、特性に合わせてアプローチを変えることが出来るようになっています。ここではその中でも代表的な4つのアプローチについて紹介をしていきます。

物理的構造化

物理的構造化とは、場面や状況を「今何をすればいいのか」を自閉症の子供に理解しやすいように組み立てることを言います。例えば自宅の中で「ご飯を食べる部屋」「勉強をする部屋」「寝る部屋」などと明確に分けていきます。そしてそれを言葉ではなく、イラストや写真・文字を使って伝えていきます。自閉スペクトラム症を持つ子の場合、耳で聞いたことよりも目で見た物の方が記憶に残りやすいためこのような手法をとる方が効果的であると言えます。

この時に注意すべきことがあります。それは「なんでもいいよ」などという曖昧さを排除することです。「この部屋は自由に使って」という何気ない言葉でも、自閉症スペクトラム症の子からすると、パニックになるひとつの要因となってしまいます。そのため極力明確に分け、伝えることを意識してください。そしてせっかく明確にした部屋の役割を日によってころころ変えることも控えましょう。「いつもと違う」と言う事が不安要素になってしまうためです。

視覚的構造化

自閉スペクトラム症の子はコミュニケーションが苦手であるため、自分の気持ちを伝えるのが苦手だったりします。だからと言って勘違いしてはいけないのは、自分の意志がないのではありません。意志は明確にあります。しかしそれを伝える手段を持ち合わせていないのです。想像するだけでそのストレスが理解できるのではないでしょうか。このように理解をするだけで、相手の気持ちを察することが出来、優しい気持ちを向けることが出来るでしょう。だからこそ「知る」ことがはじめの一歩なのです。少し話がそれましたので戻します。

自分の気持ちを伝える手段として、話すことが難しいので「絵カード」を用意しておくと良いでしょう。それが視覚的構造化と言われるものです。例えば、トイレの絵カードを用意しておき、子供がそれを手に取ったら「トイレに行きたいんだね」と聞いて、トイレに連れていく。まず初めの段階としてはこれでいいのです。この経験を繰り返していくうちに、こういう時は「トイレに行きたい」と言えばいいのか。とひとつずつゆっくりですが、理解をしていきます。発達障害児支援をする際、焦りは禁物です。ゆっくり、ゆったりと構えるようにしましょう。

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ワークシステム

自閉スペクトラム症の特性を持つ子は、今の状況を理解したり先を見通すことが苦手です。そのため「一連の流れ」というものを明確に見せることで子供を安心させることが出来ます。その際明確にすべきは以下の4つです。

  1. どんな活動(学習や作業)をするのか
  2. どのくらいの時間、あるいは量の作業や活動をするのか
  3. その課題や活動はいつ終わるのか
  4. 終わった後は何をするのか、何をしても良いのか

以上の4つを明確にしていくと、子供は安心をして今の作業に集中することが出来ます。しかしこのうちひとつでも明確になっていないと、常に不安になりそわそわしてしまい、今に集中できなくなってしまうのです。

単に「集中力がない」ということではなく、「作業の全体像が明確になっていないから、集中できない」だけなのです。このような特徴を理解することが出来れば、何気ない言葉がけも変わってくるでしょう。知らなければ「本当に集中力がないんだから!!」と叱責してしまうでしょうが、知っていればそうはなりません。その結果、子供の自己肯定感は大きく変わってくるでしょう。発達障害児だろうが健常児だろうが、教育でポイントになってくるのは「自己肯定感」です。発達障害児はその特性から自己肯定感が低下しやすく、二次障害(不登校、うつ病、引きこもり等)に繋がりやすいと言われています。繰り返しになりますが「理解する・知る」ことは非常に重要なのです。

社会的行動

空気を読んだり、相手の表情を読み取ることが苦手だと言われる、自閉スペクトラム症の子にとって人間関係を構築することは難しいのです。しかし、生きている以上人間関係が全くない世界で生きていくことは出来ません。現代では、テレワークや在宅といったことが当たり前になり始めたことは発達障害児だけでなく障害児全体にとって追い風と言えるでしょう。

しかしその前段階である、学校に関しては従来通りとなるためどうしても人間関係構築が必要となってくるのです。そこで活かせるのが社会的行動を学ぶ「ソーシャルトレーニング」です。ソーシャルトレーニングでは、その場にふさわしい表情や言動を習得する訓練を積みます。

例えば“朝、クラスメイトに話しかけられたら「おはよう」とニコニコ笑顔で応える” と覚えさせます。そうすると適切な行動をとることが出来るようになります。このようにして、1日の中で起こりうるパターンをトレーニングすることで、空気を読めなくても適切な行動が出来るようになっていきます。

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自閉スペクトラム症・アスペルガーの実態

最後に自閉スペクトラム症・アスペルガーが現代は増えているのか減ってきているのかという統計情報をお伝えします。

アメリカCDCの調査結果では、この42年間で自閉症の出現率は10,000人に3~4人というレベルから、68人に1人と言われるレベルにまで変化してきたと言います。また自閉症の内訳として、比率的には知的障害を伴わない高機能群の人たちの診断が増加しているといいます。この知的障害を伴わない高機能群の人というのが「自閉スペクトラム症」と言われる概念なのです。

医学と科学が進歩している現代においても、自閉症の出現率は急激に高まっているという現状なのです。その原因は様々言われていますが、本当のところはまだ誰にも分っていません。しかし、増えていると言う事に関しては紛れもない事実です。だからこそ発達障害児や自閉スペクトラム症の知識をしっかりと蓄え支援できるようにすることが必要です。その結果、発達障害を持つ方でも社会に貢献できるような人材になる。そうしなければ人口が減少し続ける日本の経済を支えることは出来ないのです。

【まとめ】セルフ療育|TEACCHで自閉症・アスペルガーの子供を支援

いかがでしたでしょうか?TEACCHプログラムはご家庭ですぐに実践できるようなものばかりなので、是非実践してみてくださいね!発達障害や自閉スペクトラム症の特性をもったことで、他の能力が秀でていることも多々あります。その能力を現代でうまくいかせる道を見つけ出してあげることが出来れば、障害から卒業できるのではないでしょうか。きっとその道はあるはずです。

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私は発達障害児に大きな希望や期待を持っています。だからこそ、多くの方に知識を蓄えてほしいのです。そして発達障害児の自己肯定感を低下させてほしくないのです。明るい未来はきっと彼らが作る!