以前の記事で最新の情報がなかなかありません。というお話をしましたが、政府が令和元年(2019年)に調査をしている情報が見つかりました。その調査は「令和元年度 通級による指導実施状況調査結果について」として小・中・高校を対象に調査をしたものとなります。私なりにいろいろ調べた結果恐らく現時点では最新のデータだと思われます。
今回はこの調査結果を紹介しながら、最近の傾向についてお話をしていきたいと考えています。
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紹介する調査結果は文部科学省が実施したデータ
まずこの調査結果の出所を明確に致します。
- 出所:文部科学省
- 調査名:令和元年度 通級による指導実施状況調査結果について
- 対象:国公私立小学校、中学校及び高等学校
- 対象者:通級による指導を受けている児童生徒数
そのため現状の数字を把握するのに十分信頼できる数字だと思います。
外部リンク
令和元年度 特別支援教育に関する調査の結果について
通級に通う児童生徒数は134,185名
さっそく結論ですが、今回調査対象となった「国公私立小学校、中学校及び高等学校」の通級に通う児童生徒数は134,185名という結果になりました。この数字だけ見てもなかなかぴんと来ないでしょう。まずは前年度と比較をしてみますと、前年度が123,095名だったため1年で11,090名増加していることがわかります。10年前となる2009年は54,021名でした。なんと80,164名も増えていることがわかります。さらにその10年前は20,000人ちょっとなので現在は、その頃より6倍程度という結果なのです。
皆様もご存じのように日本の出生率は低下しており、子供の数は年々減少傾向にあります。にもかかわらず通級に通う児童生徒数はこれだけ増えているのです。驚きの数字ではないでしょうか。
統計データをお見せするとこうおっしゃる方がいます。
- いや、それは昔は発達障害の調査してなかったからでしょう
- 発達障害とすぐ認定するようになったから
- 小学校の先生たちがだらしないから
- 保護者がモンスターが多く通常学級だとトラブルになるから
など。それを言ったらこのような統計はすべて意味がなくなります。ですので、そういった背景に関してはここでは触れません。あくまでも発表されている事実をもとに紹介をしていきます。
通級に通う発達障害児も増加傾向
次に紹介するデータは、どういった特性を持つ子供が通級に通っているのか。そしてどのくらいの割合を占めているのかがわかるデータです。ここでは以下の分類に分けて調査がされています。
- ADHD(注意欠如・多動性障害)
- 学習障害
- 自閉症(自閉スペクトラム症)
- 情緒障害
- 弱視、難聴、肢体不自由、病弱、虚弱
- 言語障害
ではさっそく統計データを御覧ください。
少しわかりにくいかもしれませんが、ここでは発達障害と言われる3つの特性についてだけまとめてみます。
- ADHD(注意欠如・多動性障害)
2019年=24,709名、2009年=4,013名、10年で6倍! - 学習障害
2019年=22,389名、2009名=4,726名、10年で5倍! - 自閉症(自閉スペクトラム症)
2019年=25,635名、2009年=8,064名、10年で3倍!
2019年通級に通っている児童生徒数は134,185名でした。そのうち発達障害児(ADHD/学習障害/自閉症)は72,733名でした。つまり通級に通う児童の54%が発達障害児だということがわかります。半分以上が発達障害児なのです。上記のグラフのH15年~H20頃と今を比較すると一目瞭然なのは、発達障害児の占める割合が年々大きくなっていっているのです。これが国が発表している2019年時点でのデータです。
増える発達障害児、迫られる対応
さて、ここで一つ疑問に感じることがあります。それはこれだけ急増している発達障害児に対して適切な支援やサポート、アプローチが出来ているのだろうかという疑問です。私は長らく教育業の世界で働いてきました。その立場からものを言わせていただきますと、恐らくですが学校側の支援やサポートは追いついていないと言えるでしょう。この点はあくまでも私の私見です。しかしとある統計データにこのようなものがありました。
恐らくこのアンケートに答えている方は発達障害児を持つ保護者だと思われますので、そのほとんどの方が理解や支援について満足していないと答えられています。投票された方の中には、学校側の対応や幼稚園側の対応のことも含めている方も多いと思います。その点から見ても、今発達障害児への理解や支援が迫られていると言っても過言ではないでしょう。
適切な支援とは正しい理解をすること
対応が迫られていると言ってもどうしたらいいの?となってしまうでしょう。学校の先生や保育士さんたちも日々忙しく業務に追われていると思いますので新しく何かをするというのはかなり厳しいでしょう。ただでさえ激務だと言われる職種です。しかし私はこれまでも繰り返し述べてきましたが支援をするために大切なことは「正しい理解」をすることです。
正しい理解が差別やいじめをなくす
差別やいじめの根源はなんでしょう。ちょっとした言葉の使い方でしょうか。それとも目つきや態度でしょうか。いいえ、そんな表面上のことではありません。もっともっと根深く根本的なところに原因があります。結論を申し上げましょう。差別やいじめの根源は「自分と異なるものを恐れる心」です。
人間は誰しもこの思いを持っています。なぜか。それは動物として生きるためです。種の保存をするためです。そのために自分と異なる(理解できない)者を排除しようとする習性があります。いじめっ子の性格の問題でもないし、ちょっとしたコミュニケーションの問題以前なのです。この点を保護者や教育者がしっかりと理解しておくことはとても大切です。ここが土台となるため、ここを理解したうえでその先にあるちっちゃな原因を潰していく必要があるのです。
先生や保護者がこのことを理解していなかったり、発達障害のことについて正しい理解がないとどうしても態度に出てしまいます。先生も保護者も人間ですから、感情があります。いつでも完璧な対応が出来るわけがありません。時には発達障害児が見せる特性にイラっとしてしまうことがあるでしょう。でもそれは正しく理解できていないからです。障害だと思えば絶対にイラっとはしません。その証拠に両足がない人に対して「早く走れよ!!」なんて思いませんよね?腕がない人に「もっときれいな字を書けよ!」なんて思いません。つまり発達障害児の特性にイラっとすると言う事はまだ正しい理解が出来ていないのです。当然言葉としての理解はしているでしょう。そこが入り口です。ただそこで終わっては意味がありません。階段を上っていきましょう。
外部リンク
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正しい理解には資格学習とリアルな体験がお勧め
発達障害についての階段を上っていくためにやらなければいけない事は何でしょう。私は以下の二つだと思います。
- 脳科学に基づいた発達障害に関する知識を得る事
- 実際に発達障害児に接して学ぶ事
これしかないでしょう。小手先の技術で発達障害児を思い通りに動かそう!ということは無謀です。これは発達障害児に限らず健常児相手でも無理です。そのあなたの心が簡単に見すかれてしまいますので、思いとは裏腹にうまくいかないでしょう。そのためまずはしっかりとした理解をする必要があります。といっても技術論よりは本質論を学ばれる方が良いです。
- 技術論・・小手先テクニック、こういう時どうする?的なもの
- 本質論・・人間としての特性を知る、障害のことを知るなど
ここは多くの方が間違われる部分です。本質論を手に入れてから技術論に行くことは大賛成です。しかし、技術論だけで満足する事には絶対的に反対です。多くの発達障害児の保護者や先生が苦しんでいるのは、この技術論だけをネットや書籍で見て子供に試す。しかし効果がうまく現れず嫌になる。このようなパターンです。その努力は素晴らしいです。しかし順番が違います。
- 本質論
- 技術論
この順番に変えましょう。そうすると今までとは全く違う効果が得られるかもしれません。というのも本質論を理解していれば技術論もすーっと入りますし、どこに注意して実践すればよいかが明確にわかります。抑えるポイントを理解できている状態ということです。
このような学習をできるのが一般的には資格学習だと私は思います。ネットや書籍となると、情報が偏っていたり、自分の見たい情報だけを拾い読みすることになるので結果的に「技術論」に偏りがちです。そういったことを防ぐために、いやでもすべての項目を勉強しなければならない資格学習は「正しい理解」のために最適だと思っています。さらに資格であれば必ずその裏付けがあります。医学関係、脳科学関係の裏付けをもとにして作られているものがほとんどです。そういった意味でもお勧めしています。
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以上が通級に通う発達障害児(自閉症・ADHD・学習障害)の人数という記事でした。
恐らくこのデータをもとに解説をしているブログや記事はまだほとんどないでしょう。私はこのこと自体も悲しく思います。それは発達障害への理解がまだまだ広まっていない証拠だからです。このことよりも「今年のボーナス平均」とかの方がすぐ統計が出回るじゃないですか。当然統計の取りやすさという面もあるかと思いますが、企業や情報機関としても皆の興味関心が向いているものの統計をすぐ出すと言う事を考えると、やはり発達障害に関する理解はまだまだだなと感じてしまいます。
この記事をきっかけに何か変われば幸いです☆