ADHDの特性を抑える治療薬と副作用とは(コンサータ・ストラテラ・インチュニブ)

発達障害の特性を持っている子供の場合、その特性を抑えるために薬の投与が検討されることがあります。薬の投与をすべきかどうかは賛否両論あります。私もどちらが良いと言う事は言えません。しかし薬のことを知り、どういった特徴がありリスクがあるのか知っておくことは非常に重要です。知ることで選択肢が増えることになるからです。それでは一緒に確認していきましょう!

発達障害と薬の投与について

まず発達障害には大きく3つがあります。

  1. 自閉スペクトラム症(自閉症・アスペルガー含む)
  2. ADHD(注意欠如・多動性)
  3. 学習障害

そのうち薬の投与で治療をすることが多いのは「ADHD(注意欠如・多動性)」となります。

自閉スペクトラム症の治療薬はない!?

現時点では明確にこれというものがないのが現状です。以前よりオキシトシンという治療薬が有効であると言われているのですが、反復投与の有効性がまだ明確ではない事から、本格的な治療薬としては利用されていないのが現状です。

自閉スペクトラム症(ASD)(用語解説1)の中核症状に対しては、現在は有効な治療薬がありません。オキシトシン経鼻スプレーがASDの治療薬として検討されていますが、オキシトシンの単回投与が一貫して有効だと報告されている一方、反復投与の有効性については結果が一致していません。このような不一致を生む原因を解明し、オキシトシンによる治療法を確立していくためには、反復投与によって引き起こされる生理反応を単回投与と比較することが必要です。

オキシトシンとは・・・脳の下垂体後葉から分泌されるホルモンで、従来より子宮平滑筋収縮作用を介した分娩促進や乳腺の筋線維を収縮させる作用を介した乳汁分泌促進作用が知られていました。しかし一方で男女を問わず脳内にも多くのオキシトシン受容体が分布していることが知られ、脳への未知の作用についても関心が持たれていました。そうした中、健康な大学生などを対象とした研究において、他者と信頼関係を築きやすくする効果などが報告されて注目を集めていました。

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構より引用

そのため自閉スペクトラム症の場合は、薬ではなく行動療法などで治療することが一般的となっています。

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学習障害にも治療薬はない?

学習障害においてもこれといった治療薬はないのが現状です。そのため、療育を施すことがほとんどとなります。

ただし前述の自閉スペクトラム症でもそうなのですが、自閉スペクトラム症や学習障害の特性を持つ子の多くは他の症状も合併して持っていると言われています。そのため精神を安定させるために薬を投与したり、この後紹介するADHD治療で使われる薬を投与されることがあります。

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ADHD(注意欠如・多動性)の治療薬とは

自閉スペクトラム症、学習障害と違ってADHDに関しては、明確に治療薬というものが存在します。

ADHDの特性を持つ子の場合、脳の中の実行機能系と報酬系の神経回路の機能不全があると言われています。ADHDの治療薬では、神経伝達物質のノルアドレナリンやドーパミンの再取り込みを阻害し、ノルアドレナリンやドーパミンの量を増やし、症状を改善していきます。

外部リンク
用語解説|ノルアドレナリンとは?

ADHD治療薬の有効性とは

オランダのアムステルダム大学のりースベス・レネマンらの研究によるとADHDの男児がメチルフェニデートを服用した結果、学習や脳の領域間の連絡に重要な役割を果たしている「脳白質」という部分が活性化していたと言う事が明らかになっています。

このようにADHDの治療薬は一定の効果が認められています。ただADHDの治療の目標は症状を根本的になくすことではありません。その点はご注意ください。あくまでも特性と折り合いをつけて日常生活を送りやすくすることが目標です。治療薬を投与したらADHDが無くなりました!ということは基本的にありませんので、注意をしましょう。

ADHD治療薬の種類

  1. コンサータ
  2. ストラテラ(アトモキセチン)
  3. インチュニブ
  4. ビバンセ

これらが一般的なADHDの治療薬です。現在日本で最もメジャーなのが「コンサータ」「ストラテラ」の2種類でしょう。ADHDの治療薬と言えばこのどちらかと認識されている方も多いと思います。体内で薬がゆっくり効く「コンサータ」であったり、1日2回服用が可能で24時間効果が期待できる「ストラテラ」、イライラや癇癪など情動を安定させる効果もある「インチュニブ」などそれぞれ特徴があります。

ADHDのどの特性が強く出ているかによっても、治療薬は変わってきます。

以前は即効性の高い「リタリン」という薬が使用されていましたが、依存性の問題が指摘されるようになったため現在ではあまり処方されることは無くなりました。このように、まだまだ治療薬の研究は続いている状況だと理解しましょう。そのため数年後には新しい薬が出て、お子様にぴったり合うものが処方される日が来るかもしれません。

治療薬の選択の仕方とは

治療薬を選択するのは当然医師となります。そのため皆さんが「絶対にインチュニブを処方してください」といったところでそれがかなうことは無いでしょう。医師は様々な情報をもとにどの薬を投与するか検討してくれるため、この点は任せるしかありません。

しかし、皆さんが治療薬のことを知っておくことで、「なぜコンサータではなくストラテラなのか?」など質問できるようになるでしょうし、その知識が今後こどもの様子を見る時に役立つはずです。次回の診察時に、的確な報告を医師にすることが出来れば、お子様の症状改善に繋がる可能性も高まります。

大切なことは、医師は知識豊富で正しい選択が出来る可能性の最も高い人と言えます。しかしお子様を見ている時間はそう長くはありません。子供を見ている時間が一番長いのは、ご家族である皆様であったり、支援を行っている施設の方々でしょう。ですから、皆さんの役割は感情を交えず、冷静に子供の様子を観察し、特性を医師に伝えることが大切なのです。感情を入れないという点は非常に難しいでしょう。しかしとても大切なことですので、是非意識をしてみてください。

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気になる副作用は

薬の投与をするとなった際、皆さんが一番気にされる部分がこの副作用の部分でしょう。

結論を申せば副作用はあります。もともと薬というものには副作用が付いて回るものですので、一定の副作用は当然あると理解しましょう。

具体的には以下のような副作用があるとされています。

  • 食欲の低下
  • 寝つきが悪くなる(不眠)
  • 頭痛
  • 眠気
  • 体重減少
  • 腹痛
  • 傾眠
  • 血圧低下

このようなものが主な副作用です。ただ上記の副作用は先ほど紹介した治療薬4種でみられる副作用をまとめたものになりますので、詳しくは医師から確認をするようにしましょう。またどの副作用がお子様の体に現れるかは個人差があります。

多少の食欲低下であれば、、、、と大人の場合は思いがちですが、子供の体は成長期まっさかりでしょうから栄養不足はADHDの症状が出る以上に問題になることもあります。正しい食事をとることで、栄養が脳に行き届き、脳が活性化しADHDの特性も多少抑えられることも十分に考えられます。そのため治療薬にどっぷりつかって、それで安心をするようなことが内容にしましょう。

治療薬はありますが、特効薬はないと思った方がいいと私は思います。様々な要因が絡み合っているので、治療薬を投与する事、療育をすること、規則正しい生活をすることなどバランスを意識していきましょう。

外部リンク
日経メディカル|注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬の解説

【まとめ】ADHDの特性を抑える治療薬と副作用とは

以上でADHDの特性を抑える治療薬と副作用とは(コンサータ・ストラテラ・インチュニブ)についての記事を終わりにします。

冒頭でも述べたように私は、治療薬について賛成でもなければ反対でもありません。

状況に応じて必要だと感じれば投与すればよいと思います。病院で処方される薬は、多くの研究・実験がなされたうえで世に出回っているわけなので、投与した瞬間に最悪な状況になってしまう。。。と言う事はごく稀でしょう。

「絶対に薬は飲ませない!」と考えるのではなく、「少しの期間だけ試してみようかな?」と思うことで気持ちが楽になる保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事はあくまでも参考程度にとどめて頂き、治療薬の投与に関して興味を抱いた方は医師に相談してみてください。