コミュ障という言葉を最近よく耳にするようになりました。皆さんも一度は聴いたことがあるのではないでしょうか?コミュ障とはコミュニケーション障害を指す場合と俗語として気軽に使われる場合があります。空気が読めない、流ちょうに話すことができない、語彙が少ないなどの特徴がコミュニケーション障害にあたるのか、アメリカ精神医学会が設定しているDSM-5という診断基準をもとにみていきましょう。
よく耳にするコミュ障とコミュニケーション障害は違う?
まず注意していただきたい点があります。それは最近芸能人やyoutuberなどが「私コミュ障なんですよ」とか「お前コミュ障だな!」などと使っていることがあるのですが、コミュニケーション障害という言葉には2つの使われ方が現代ではあります。この点をまずはしっかりと理解しましょう。
- 俗語としてのコミュニケーション障害
- 医学的なコミュニケーション障害
簡単に分けるとこのようになります。俗語としてのコミュニケーション障害は、ただ単に「空気が読めない」ことや「話し下手」なことを取り上げて面白おかしく「コミュニケーション障害(コミュ障)」という風潮があります。ご本人たちに聞いたことはありませんから確かなことは言えませんが、こういった場合のコミュ障はほとんどの場合病院で診断されたものではないでしょう。
それに対して医学的な見地から見たコミュニケーション障害というものも存在します。
いろいろな発達障害の形
発達障害というと下記の3つをイメージされることが多いでしょう。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- ADHD(注意欠如・多動症)
- 学習障害(LD)
しかし国際的に用いられる診断基準では下記も発達障害として表現されます。
- 知的障害
- 運動障害
- コミュニケーション障害
つまり今回ご紹介しているコミュニケーション障害も発達障害のひとつの形だということができます。また一般的に言われる発達障害児の特性のひとつとして「対人関係が苦手」「コミュニケーション能力の欠如」が言われることが多くあります。そういったことから、コミュニケーション障害という診断を明確に受けていなくても、それに近い特性が出ている場合はかなりあると言えます。
外部リンク
【協会監修】ADHD・自閉症診断テスト|子ども発達障害チェックリスト
DSM-5からみるコミュニケーション障害
DSM-5はアメリカ精神医学会が設定している診断基準です。発達障害の診断をする際にもよく利用されるものです。まずDSM-5ではコミュニケーション障害の基準をどのように設定しているか確認しましょう。
- 言語症/言語障害
- 語音症/語音障害
- 小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害(吃音)
- 社会的コミュニケーション症/社会的コミュニケーション障害
- 特定不能のコミュニケーション症/特定不能のコミュニケーション障害
以上の5つに分類されています。
様々な統計があるため100%正確な数字とは言えませんが、コミュニケーション障害者の人数は、
- 音声言語障害 346万人
- 聴覚障害 1300万人
という統計が出ています。(2016年 京都学園大学 健康医療学部 コミュニケーション障害と推定障碍者数より引用)
いかがでしょう?想像していたよりも多くありませんか?私はこの数字を聞いて驚きました。日本人の人口は1億2千万人ちょっとです。そう考えるとコミュニケーション障害と診断されている人は推計1600万人となり人口の10%以上となります。10人に1人となります。あくまでこれは推計となるようですが、大学が調査したものであることから根拠のない数字では決してないでしょう。
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コミュニケーション障害の種類と診断チェックリスト
それではコミュニケーション障害の5つの分類について詳細を確認していきましょう。
言語症/言語障害
言語障害では、話すや書くといった言語の習得や仕様に困難を有する障害です。特徴としては使う語彙や構文(いいまわし)の種類が少なかったり限られていることが多いです。また文章と文章を繋げることが難しい場合も多く、話す際に困難を感じることが多くなります。一般的に発症が確認できる年齢は乳幼児期(2歳~)くらいからと言われています。
チェック項目
- 語彙が少ない
- 構文(いいまわし)の種類が少ない
- 文章を組み立てることが苦手
- 文章と文章繋げることが苦手
- 分かり易く説明することが苦手
語音症/語音障害
身体的な障害(脳性まひ・口唇口蓋裂・難聴など)や神経学的な障害がないにもかかわらず、言葉を明瞭に発することに困難を有する障害です。正確な発音が出来ないがために思っていることを相手にうまく伝えられないことが多くなります。そのため人間関係や学業成績、職業的な能力にも制限がかかります。一般的に発症が確認できる年齢は幼少期(3歳~)くらいからと言われています。
チェック項目
- 言葉の発音が明瞭ではない
- 母音の発音に誤りがあるが治らない
- 子音の発音に誤りがあるが治らない
- 発音不能な音がある(さ行・た行など)
小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害(吃音)
言葉を流暢に発することに困難を有する障害です。同じ音声や音節が繰り返されたり、とぎれとぎれ話すような傾向が見受けられます。このようにスムーズに言葉を発することができない状態を「吃音」と表現します。また「どもり」と表現することもあります。吃音の方は、スムーズに話さなければというプレッシャーを感じてしまう吃音患者もとても多いと言われます。一般的に発症が確認できる年齢は幼少期(3歳~)くらいからと言われています。
チェック項目
- 言葉の初めや一部を繰り返す(ぼ・ぼ・ぼくはね)
- 初めの音を伸ばす(ぼーーーーくは)
- 第一声の言葉が出にくい
- 話す時に力を込めているように見える
- 単語の途中で言葉が止まる
社会的コミュニケーション症/社会的コミュニケーション障害
社会生活で必要不可欠となるコミュニケーションを適切な形で取ることに困難さがある障害です。例えば相手によって言葉遣いや話し方を変えると言う事が難しかったり、ジョークの解釈が難しかったりすることがあります。いわゆる場の空気や雰囲気を読むことが苦手である傾向もみられます。一般的に発症が確認できる年齢は幼少期(3歳~)くらいからと言われていますが、ある程度自立した社会生活を送るまで気づかない場合も多いようです。
チェック項目
- 場違いな発言をしてしまう
- ジョークを真面目に受け止めてしまう
- 挨拶などの基本的なコミュニケーションが取れない
- 相手がだれであっても話し方が一定である
特定不能のコミュニケーション症/特定不能のコミュニケーション障害
こちらはここまで紹介した4つの障害に当てはまらないが、コミュニケーションに何らかの困難さがある場合に診断されます。表現を変えると、「まだ特定ができない状態であるが、確かにコミュニケーションに関する困難さを有している状態である」となります。そのためここは例外パターンだと考えておきましょう。
コミュニケーション障害の訓練や改善は可能?
はい、必ず改善できると保証できるものではありませんが、訓練によって改善は十分に見込めるものです。
国家資格に「言語聴覚士」というものがありますが、言語聴覚士は、音が聞こえない、あるいは聞き取りづらいという症状の聴覚障害。言葉が出てこない、言葉の意味を理解できない、読み書きが上手くできないなど言語にまつわる障害である失語症。声を発する器官の運動や形態の異常によって正しく発音・発語できない構音障害。これらのような、言葉によるコミュニケーションが困難である人の状況を改善・軽減するためのリハビリ専門職のことなのです。
またそれ以外にも、民間の療育施設などでも発音の訓練やTPOに合わせたコミュニケーション訓練というものが行われています。そういった場所でも改善が期待できます。
幼少期は発音がうまく出来なかったけど、身体的な成長とともに自然と改善されたというパターンもあるため、幼少期からあまり敏感になりすぎないようにして下さい。
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外部リンク
発達障害コミュニケーションサポーター資格|公式サイト
【まとめ】子供のコミュニケーション障害診断チェック(DSM-5)
以上が、子供のコミュニケーション障害診断チェックとなります。
コミュニケーションは社会生活を送るうえでとても重要であり、学校生活を楽しく過ごせるかどうかが関わってきてしまう部分でもあります。そのためもし気になる症状があれば小児科で診察をしてもらうと良いでしょう。訓練で改善できる部分も大きいため、完全に治らなくとも気にならないレベルにすることは十分に可能でしょう。ただこの際はあまり早期に「障害」という言葉を使わないようにしてあげてください。
お子様の自己肯定感を保ちつつ、保護者としてできることをしてあげる。そのような姿勢で支援をしていきましょう。