自閉症の子供の中には、消化器に関する症状(下痢や便秘)が現れる子供が多いと言います。今回は発達障害の特性が実は脳だけでなく、腸内環境も影響しているというお話をしてきます。これまでは発達障害=脳の障害ということでしたが、実は最近では腸内環境も影響しているという論文が多数発表されています。もしこの説にも一理あるのであれば支援方法が変わってくるでしょう。一緒に確認していきましょう!
発達障害は脳の障害
そもそも発達障害とはどのような定義をされているか今一度確認してみましょう。
「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
世界的に見ると少し古い表現となっている「自閉症」「アスペルガー」がいまだに表記されており更新されていないのが残念ですが、今回の要点は「脳機能の障害」であるという点です。世界的な基準のひとつであるDSM-5でも基本的には脳機能障害という考え方が基本的な考え方となります。
今回の記事では「自閉症」という表記に統一して紹介しますが、自閉症と自閉スペクトラム症はほぼ同義だと捉え読み進めてください。
外部リンク
【協会監修】ADHD・自閉症診断テスト|子ども発達障害チェックリスト
腸内フローラが影響している?
ここから紹介するお話はあくまでもまだ可能性の話です。100%そうです。という事ではなく、最新の研究に関する情報をお届けしているだけですので、その点はご理解ください。
発達障害についてはまだまだ研究が進められている分野です。そのため現在もさまざまな仮説がたてられて研究が進んでいます。その中で近年注目されているのが、この腸内フローラの影響なのです。腸内フローラは腸内細菌叢とも言われますが、うつ病をはじめとする精神疾患の症状に何かしらの影響を与えているのではないかといわれ、研究が盛んにおこなわれています。
腸内フローラとは
私たちの腸内には、多種多様な細菌が生息しており、その数なんと、1,000種100兆個。
特に小腸から大腸にかけて生息しており、これらの様々な細菌がバランスをとりながら腸内環境を良い状態にしている。顕微鏡で腸の中を覗くと、それらはまるで植物が群生している「お花畑([英] flora)」のようにみえることから、『腸内フローラ』と呼ばれるようになりました。
https://www.biofermin.co.jp/nyusankin/chonaiflora/aboutchoflora/より引用
腸と脳は相関関係にある
最近の研究では、腸内細菌は脳の機能にも大きな影響を与えることがわかってきています。脳と腸が相関関係になることを「脳腸相関」と言ったりします。この脳腸相関が明らかになってきたことで、精神疾患の原因が腸にもあるのではないかという研究が盛んになっているのです。
例えば2016年に国立精神・神経医療研究センターが行った研究では、腸内フローラの善玉菌がすくないことで、うつ病のリスクが高くなったという研究結果が出ています。
自閉症の子は消化器が弱い?
あまりこの情報を目にすることはないのですが、実は自閉症の特性を持つ子は、消化器系の症状も出やすいと言われています。具体的には下痢や便秘です。アメリカのある統計では自閉症の特性を持つ子供の3割から5割が消化器系の症状も抱えていると言われており、自閉症の状態は腸の状態と相関関係があると認められました。さらに調べていくと、自閉症の子供の腸内フローラは定型発達児に比べ、ビフィズス菌などの菌が少ないという事もわかっているようです。このため腸内フローラの菌のバランスが崩れ、下痢や便秘といった症状が出やすいという傾向があると言います。
さらに自閉症の症状が重たい子供程、腸内環境も乱れていることもわかっています。このような研究から自閉症と腸内環境の相関関係はほぼ確実なものとしてみることができるでしょう。
腸内環境を整えたら症状が自閉症の症状が緩和!
さぁ、驚くはここです。アメリカアリゾナ州立大学のローザ・ブラウンとデー・ウック・カンさらの研究チームは、腸内細菌叢移植を自閉症の子供の行いどういう結果をもたらしたのかという研究結果を発表しています。被験者となったのは自閉症の特性を持つ18名の子供たちです。腸内洗浄を行った後、健康な人の腸内細菌叢を投与しました。すると、治療後から便秘や下痢といった症状が解決していったと言います。さらに自閉症特有の行動症状も次第に改善されていったのです。同様の治療を2年行った後の追跡調査では、自閉症の症状はなんと45%程減少したと報告されています。
これは驚くべき結果ではないでしょうか?腸内環境を整えることで消化器系のトラブルが改善されたことは当然としても、自閉症の症状が約半分くらいになっているという事です。この結果を見ても腸と発達障害の間には相関関係があるという事が納得できると思います。
しかし、日本では腸内細菌叢移植に関する研究はまだまだ未開発な分野であり、当然保険適用もされていません。診療できる施設も限られているため、今すぐに同様の治療を受けることは出来ないかもしれませんが、もしかしたら数年後には日本でも腸内細菌叢移植ができるようになり、自閉症の子供たちの新たな道が見えるようになるかもしれません。
ここで紹介してきた研究に関しては、すべて記録が残っているものであり実証できるものではありますが、だからと言って「自閉症の症状は腸内環境をよくすることで改善する」と断言できるものではありません。これを断言するためには、もっと多くの実験データが必要であること、そして他の疾患との関連性など細かな点を検討していく必要があります。そのため現段階では、「そういった可能性があるらしい」という程度に留めるようにしてください。
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【まとめ】自閉症児の腸内環境を改善すると症状が緩和された研究結果が!
いかがだったでしょうか。私はこの情報を目にした時に、発達障害児の未来が少しだけ明るく見えた気がしました。先ほども述べたように現段階では「可能性」があるという程度の話ですし、日本では実際にこの治療を受けることが難しいのですが、世界的に見ても研究が活発に進められているというだけでも光を感じます。
さらにまだまだ研究段階であることから、現代の技術をもって今後5年10年と研究が進んでいけば、きっと今では想像できないような治療方法や特効薬が開発されているのではないでしょうか。その可能性を感じたらちょっと明るい気持ちになることができました。
発達障害児の人生は子育ての終わる20年程度ではなく、80年くらいは続くわけです。当然今すぐに解決できればベストですが、このさき10年でもし治療方法が確立されれば、残りの人生をより楽しめるのではないかと思います。
きっと発達障害児を持つ保護者の皆様は、子供に出来ることは何でもしてあげたい!と思われていることでしょう。藁にすがる思いの方もいらっしゃるでしょう。そのような方は、腸内フローラ・腸内環境の改善という事もキーワードのひとつにいれて、日ごろの食生活から見直していくだけでも、何かが変わるかもしれません。その可能性がぜろではない限り、やってみる意味はあると思います。腸内環境をよくすることは発達障害にかかわらず、健康的な生活を送るためにも重要な要素だと思いますから取り組んでも損はないと思います!
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