発達障がい児(自閉症・ADHD)の療育にはいろいろな種類があります。それぞれの特性に合わせて療育を選択するのですが、その中でもSSTというトレーニングは自宅でも実践が出来る比較的簡単な療育になります。今回はSSTを行う時のポイントについて確認をしていきたいと思います。
発達障がい児の療育
発達障がい児の療育にはいろいろな種類があります。まずはどのようなものがあるのか簡単に確認をしていきましょう。
- 応用行動分析(ABA)
- 薬物療法
- 食事療法
- 音楽療法
- 作業療法(感覚統合療法)
- TEACCH(ティーチ)
- SST(ソーシャルスキルトレーニング)
- 箱庭療法
このように沢山の種類があります。厳密にいうと上記のトレーニングも、グルーピングできるものがあるのですが、ここではあくまでも代表的な療育を列挙させていただきました。それぞれ自閉スペクトラム症の特性を持つ子に推奨されているものや、ADHDの特性を持つ子に有効なものなどが分かれていきます。
今回はこれらの中で、特段専門知識がなくても実施が出来る「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」についての紹介をしていきます。専門知識がなくても、、、と表現しましたが、当然最低限の理解は必要ですので、書籍等で学ぶ事を推奨します。
SST(ソーシャルスキルトレーニングとは)
では、SSTとは一体どういうものなのでしょうか?
ここでは一般社団法人SST普及協会のホームページから引用をさせて頂きます。
“Social Skills Training”の略で、当協会では時代にマッチした「社会生活スキルトレーニング」の和語を用いることを提唱しています。なお、これまでは「社会的スキル訓練」、「ソーシャルスキル・トレーニング」、また精神科領域では「(社会)生活技能訓練」とも呼ばれてきました。単に、頭文字を取って「エスエスティ」と呼ばれることもあります。
SST は 1940 年代の行動療法にその原型を求めることができ、その後、認知の要素を取り込みながら発展してきました。複数の理論を背景としてさまざまな技法を含んでいるところは、認知行動療法と重なるところが大きいと考えられます。SST は効果が実証された体系的な方法で、日本でもその効果が認められ、 1994 年 4 月に精神科を標榜している保険医療機関において入院加療者を対象として「入院生活技能訓練療法」が診療報酬化されました。対人関係を中心とするソーシャルスキルのほか、服薬自己管理・症状自己管理などの疾病自己管理スキルを高める方法がスキルパッケージとして開発されています。
現在では、精神科領域だけでなく、教育領域、就労支援関連領域、矯正教育及び更生保護領域、職場のメンタルヘルス(産業領域)、一般市民など、さまざまな領域で実践されています。また、家庭や職場への訪問など、地域生活者の現場での支援も行われています。
SST は希望志向であり、精神障害をもつ人たちをはじめ、支援を必要とする方の希望に基づいた支援方法です。自己対処能力を高め(エンパワメント)、一人ひとりのリカバリーを目指して、SST が広く活用されることが期待されています。
つまりSSTでは社会で生活するうえで必要となるスキルを身に付けるトレーニングという事になります。具体的にはどういったことかと言うと、下記のようなものがあります。
- TPOに合わせた挨拶・会話
- 自分の感情を適切に表現する
- 他者の感情を理解する
- コミュニケーション能力全般
- 自身の情緒を安定させる
これらを見ると自閉スペクトラム症の特性を持つ子だけでなく、ADHDの特性を持つ子も学ぶ必要があることがわかるでしょう。実際にSSTは自閉スペクトラム症、ADHD、LD等の発達障がい児が積極的に行う療育なのです。当然と言えば当然でしょう。どのような特性を持っていたとしても、社会にでて生活をする時に必ず必要になるスキルをトレーニングするわけです。そういった観点から見れば、発達障がい児だけに限らず、定型発達児もトレーニングをして損をすることはないでしょう。定型発達児でも他者とのコミュニケーションをうまく取れないことで苦しんでいる子は多数いるのですから。
SSTの5ステップ
SSTはトレーニングをする際に、5つのステップを意識するように作られています。これは基本中の基本です。トレーニングを自宅で行うことを検討されている方は必ず頭に入れておきましょう。
- 教示
- モデリング
- リハーサル
- フィードバック
- 般化
これら5つになります。字面だけみているとまた難しそうなものが出てきたなと感じるかもしれませんが、簡単に表現するとこうなります。
- まずは説明をしましょう
- 次にお手本を見せましょう
- 次は子どもにやってもらいましょう
- 出来た所と出来なかった所を確認しましょう
- 日常生活でも活かせるようにしましょう
とても簡略的な表現ですが、このようになります。SSTと言うトレーニング名もそうですし、この5つのステップもそうなのですが、発達障害関連の専門用語は本当に難しく聞こえたり見えたりします。普段目にすることのないよな表現が使われていることが多いため、このような言葉にアレルギー反応を示す方も多いのではないでしょうか。私はこのブログでも常々伝えていますが、こういった拡がりにくい要因をひとつずつ除去していきたいと考えています。小難しい表現をわざわざ使う必要なんてないと思いますから。
さて、話を戻します。発達障がい児の支援を行う際に重要になる基本的な事は「まず大人がお手本を見せる」という事です。これは子どもたちの特性を考えると分かりやすいでしょう。口で説明されただけでスムーズに理解出来て、すぐに実演が出来るでしょうか?なかなか難しいですよね。子どもたちはイメージがつかず何のことやらよくわからないでしょう。だからこそ、視覚的アプローチをするために「大人の実演」を先に行うのです。そしてこの実演は1度だけでなく「何度も」やることが大切です。先ほどの5ステップに合わせて表現するなら、②のモデリングと③のリハーサルは交互に何度も何度も実施しましょう。そうすることで、子どもはコツを掴み、上手に出来るようになってきます。
この時に④のフィードバックで、出来ていないところを指摘しすぎる行為にも注意が必要です。今述べたように②と③を繰り返すことで、自然と上手になっていく部分も多数あります。にもかかわらず、一度子どもにやらせて、出来ていないところを全てあげつらっていたら、子どもはどういう気持ちになるでしょうか?続けたいと思うでしょうか?
結局療育施設と家庭での療育の差はここにあると思うのです。療育施設のスタッフの皆さんはプロですから、そういったトレーニングを受けています。そのため、トレーニングを継続させるためのコツを心得ています。しかし、家庭でやるとなると感情も相まって、指摘や叱責が多くなり、互いに感情的になってトレーニングどころではなくなる。こういったケースがとても多いのです。SSTは自宅でもできるトレーニングが沢山あるのですが、うまくいかないのはこういったところです。
しかし、最近では児童発達支援士のような発達障害に関する資格の受講者数が凄く伸びているようで、いたるところで広告も目にするようになりました。そうやって支援の基本的なスキルを保護者が身に付けていく時代であれば、SSTを自宅で実践することもできるようになるのではないかと思い、今回のブログを書いています。
SSTのトレーニング種類
最後にSSTではどのようなトレーニングを行うかについて紹介をしていきます。ただこちらは、書籍なども多数販売されているのでそちらを数冊購入し実践してみるのが一番かもしれません。そのためここではトレーニング例を紹介するに留めたいと思います。
- 挨拶トレーニング
- 言葉探しゲーム
- 虫食い作文
- 姿勢を浴しよう
- 旗揚げゲーム
- なぞなぞクイズ
- たくさん言えるかな
- 会話のキャッチボール
- 感情読み取りゲーム
- ごめんねゲーム
- 一緒に○○を作ろう
- 名探偵ゲーム
- 困ったときはヘルプを出そう
このようなものが一例として挙げられます。どれも自宅で簡単に実践が出来るようなものばかりです。一つ一つは本当に簡単です。ただ難しいのは、自分の子どもに適したトレーニングは何だろうか。と考えることです。そこを見極めるためには、応用行動分析と言うもので、子どもの行動を分析し、何に不便を感じたり困っているのかを見極める必要があります。この点が自宅で行う場合の一番の難しいポイントだろうと思います。ただ逆に、毎日見ている子どもだからこそ、その特性を一番理解しているのは保護者であるとも言えます。そういった方であれば、案外どのトレーニングを選定するかは苦ではないのかもしれません。一度計画を立ててみるのも良いかもしれませんね。
関連記事
発達障害児のソーシャルスキルトレーニング(SST)を自宅で行う方法
【まとめ】自閉症児・ADHD児に有効なSSTを行う5つのステップ
以上で今回のブログは終了となります。
自宅でSSTを行うきっかけとなれば幸いです。ただ、あまり無理なさらないでくださいね。思っている以上に我が子の療育を自宅で行うのは根気がいることだと思います。SSTをやらなければ!と思う事で精神的に苦しくなり、保護者の笑顔が失われてしまっては本末転倒です。
バランスを見ながら、楽しく実践できそうであれば実践してみてくださいね。ありがとうございました。
児童発達支援士のお申込みはこちらから。発達障がい児支援の資格として人気が高く、累計受講者数も圧倒的と話題の児童発達支援士…