皆さんは摂食障害についてご存知でしょうか?食事を食べられなかったり、飲み込んだ食べ物を吐いてしまう「神経性やせ症」(拒食症とも呼ばれる※)や、食べすぎをコントロールしきれない「神経性過食症」(過食症とも呼ばれる)などが挙げられますが、発達障害の特性を持つ方に起こりえる二次障害でもあります。
今回はこの摂食障害について紹介していきたいと思います。※神経性無食欲症・拒食症とも呼ばれる神経性やせ症ですが、必ずしも食欲が無いわけではなく、過食が見られる場合もあるため、神経性やせ症という新しい病名が提唱されているようです。
二次障害とは
二次障害とは発達障害などで周囲からの理解を得られ辛い環境などで繰り返し注意された経験や、不安な経験をすることから自己肯定感が下がり起こり得る二次的な障害のことを指します。
二次障害は「内在化障害」「外在化障害」に分類
内在化障害とは、自分に対する苛立ちや精神的な葛藤などが自分に向けて表現され、自分自身に大きく影響を及ぼす精神疾患や症状のことを指します。
外在化障害とは、他者に対して影響を及ぼすものを指します。自分のことを誰にも理解されない、自分では努力をしているのに怒られてしまうなどの経験から、他者に対して問題行動を起こすことで発達障害の葛藤を表現しています。また、外在化障害は内在化障害と併せて起こる可能性もあります。
摂食障害とは
食事の量や食べ方など、食事に関連した行動の異常が続き、体重や体型のとらえ方などを中心に、心と体の両方に影響が及ぶ病気をまとめて摂食障害と呼びます。摂食障害では、必要な量の食事を食べられない、自分ではコントロールできずに食べ過ぎる、いったん飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまうなど、患者さんによってさまざまな症状があります。症状の内容によって、摂食障害は細かく分類されます。代表的な病気に神経性やせ症、神経性過食症、過食性障害があります。
摂食障害は10代から20代の若者がかかることが多く、女性の割合が高いのですが、年令、性別、社会的、文化的背景を問わず誰でもかかりうる病気です。
日本で医療機関を受診している摂食障害患者は1年間に21万人とされています。さらに治療を受けたことがない方や、治療を中断している方が多数いることがわかっています。
摂食障害にかかると、心身の成長・発達と健康、人との関係、日常生活や、学業、職業などの社会生活に深刻な影響をあたえます。やせや栄養障害、嘔吐などの症状によって、身体の合併症を来し、時には生命の危険がある場合もあります。また、別の精神疾患をともなうこともあります。摂食障害の影響が大きく、長くならないうちに、摂食障害のサインや症状に気づいたら、できるだけ早く専門家に相談して治療を受けることが大切です。
厚生労働省 知ることから始めようみんなのメンタルヘルスより引用
外部リンク
厚生労働省 知ることから始めようみんなのメンタルヘルス
摂食障害の症状とは
摂食障害に多くみられる症状の例を一部紹介していきます。いくつかが当てはまることが多く、必ず全ての症状が当てはまるとは限りません。
- 絶食をする、食事の量を制限する、食べることに対して嫌悪感がある、食欲がわかない
- 食べたものを自分で嘔吐する
- 下剤を決められた量以上に使って食べたものを出そうとする
- 自分でコントロールできずに大量に食べてしまう
- 体重や体形への不満がある
- 強いやせ願望や体重が増えることへの恐怖がある
- 自尊心が低い
- 精神的な苦痛がある
- 疲れやすい、寒がり、胃もたれ、便秘、むくみやすい等の身体的な症状がある
- 睡眠の障害がある
これらに悩んで病院へ行き、診察などを行っていくうちに普段の行動やその他の悩みなどを相談したところ発達障害の可能性が見つかり、詳しく発達障害の検査を行ったところ発覚した例もあります。
二次障害として摂食障害を起こすきっかけとは
発達障害の特性を持つ子どもは、その特性から出来ないことを他者と比較されて厳しく叱られたり、いじめやからかいの対象となりやすいです。他にも対人関係での悩みや失敗などが負の経験として積み重なっていた結果、自己肯定感や自尊心などが低い傾向にあります。
そういったストレスが積み重なっていき、どこかのタイミングで心が限界を迎えてご飯を食べすぎてしまう。するとご飯を食べている時は不安や嫌な思いといった辛い気持ちから解放されて幸せな時間が続きます。
そして食べるのを止めると辛い気持ちを思い出してまた苦しんでしまい食べてしまう。結果的に摂食障害、この場合は神経性過食症にはまってしまいます。食べている時間を「痩せるために努力している時間」に変えると神経性やせ症ともいえるでしょう。
つまり、「辛い気持ちから自分を守る」ために摂食障害が引き起こされるともいえるでしょう。
もちろんきっかけや原因は人それぞれです。ですが、「自己肯定感や自尊心が低い」というのは他の二次障害でもよく挙げられる項目です。子どもの自己肯定感を高めていくことで、1つの予防になるともいえるのではないでしょうか。
以下の記事にて自己肯定感を上げる工夫を紹介していますので、よろしければご覧ください。
「選択的摂食」とは?
これは特定の物しか食べられない摂食障害の1つで、特定の食べ物以外に対して強い嫌悪感や恐怖を感じる精神疾患です。
周囲から見ると好き嫌いや偏食と間違えられやすく、よく「一口だけでも食べてみない?」と勧められて本人が強いストレスを感じやすいものです。無理に食べたり、匂いを嗅ぐだけでも嘔吐してしまう場合があります。
こちらも対人関係への悩み、極端な痩せ願望、食に関わるトラウマや生まれ持った遺伝的要因などが原因として考えられているようです。もちろんこれ以外の原因もあります。
なにか気になることがある時には
まずはこちらのチェックリストを見つつ、セルフチェックをしてみてはいかがでしょうか?
外部リンク
摂食障害治療 おすすめクリニック・病院 摂食障害のセルフチェック
チェックリストはあくまでも簡易的な診断補助ツールであり、診断を確定するものではありません。これによって双極性障害の疑いが出なかった場合でも、悩みが続く方や周囲の方で気になる方がいるようでしたら、まずは医師や各種支援機関などに相談してみることをおすすめします。
メンタルヘルスの支援が大切!
ここまで紹介してきた摂食障害は、発達障害ではない方がなることも当然多くあります。共通して言えることは、メンタルヘルスつまり心の健康を保つことが重要だということ。
しかし、世の中には理不尽なこともありますし、自分ではどうにもできないこともあるものです。そういう時には、やはりほかの人の力を借りることも重要です。メンタルヘルスの支援をしてくれる人が身近にいれば相談をする。または精神科や心療内科などに行ってみる。
苦しんでいる本人にとっては、このような行動は勇気のいることなので重い腰が上がらないかもしれません。ですので、身近に苦しんでいる方がいた場合は、積極的に支援の手を差し伸べてあげましょう。差し出した手をどうするかは、その当事者の判断です。でも、きっとその手を取り、勇気ある一歩を踏み出せる方もいるはずです。
精神疾患にならないため、または悪化させないためには、適切なメンタルケアや支援が不可欠です。支援の心を持つ方の力を合わせて乗り越えていきましょう!
【まとめ】発達障害によって引き起こされる二次障害 摂食障害とは|精神疾患を知る
ここまで摂食障害について紹介をしてきました。
摂食障害は決して治らないわけではありません。ただ時間がかかり、ぶり返すことが多々あるのも事実です。そのため、時に焦ったり本当に治るのか?といった不安が余計に摂食障害を強くしてしまう場合もあるそうです。
決してあきらめずに治療に取り組み、周囲の方は根気強くご本人を支えてあげてください。
摂食障害や発達障害で何かお悩みの方は、まずはお近くの医療施設や支援機関などへご相談に行ってみるのはいかがでしょうか?自分の気持ちを誰かに伝える行為は、とても難しく勇気のいる行為ですが、吐き出してみることで楽になる場合もあります。
1人で悩まずに是非、足を運んでみてください。
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