発達障がい児に大切なアンガーマネジメントとは

皆様は「アンガーマネジメント」というものをご存知でしょうか?これは「怒りの感情と上手に付き合うための心理教育・心理トレーニング」で、近年では職場の人間関係におけるトラブルなどから注目が集まり、社員研修などで行われることが多いものです。社員研修と聞くと大人が対象になっており、子どもには関係ないと思われるでしょう。ですが、アンガーマネジメントでは子どもも対象としています。アンガーマネジメントを行うことで、どのような点が発達障がい児の役に立つのか、やり方などを紹介していきます。

なぜアンガーマネジメントが大切なのか?

発達障害を持つ子どもがよく抱える悩みの中には「自分の気持ちを他者にうまく伝えることができない」ことや「他者の感情を察するのが苦手」などが挙げられます。

この「他者の感情を察するのが苦手なこと」から自分は馬鹿にされている、いじめられていると勘違いして衝動的な言動をしてしまうことがあります。そこから友人と喧嘩になってしまうことや、他者から距離を置かれてしまい孤独になってしまう状況もありえるでしょう。

これは「コミュニケーションの失敗」として本人は記憶するでしょう。この経験が何度も何度も繰り返されていくと自己肯定感の低下が起こり、他者とのコミュニケーションへの抵抗感、人間関係を築いていくことへの拒否感を持ってしまうでしょう。そこで感情のコントロールが大切になってきます。アンガーマネジメントを身に付けて「怒りや苛立ちの感情と向き合う」ことができれば、感情から衝動的な行動を減らして、コミュニケーションのトラブルを減らしたり、人間関係の構築を少しでも良いものにしていくことができるでしょう。

また、アンガーマネジメントを身に付ける時には周囲の大人(保護者など)も積極的に関わる必要があります。子どもにアンガーマネジメントを実践するのと同時に、大人にもアンガーマネジメントが求められるからです。家庭内でどうしても感情が昂ってしまい、子どもを叱責してしまう。そうすると子どもも感情的になって言い合いになってしまうというパターンは数多くあります。

子どもと大人が一緒に「なぜアンガーマネジメントが必要なのかな?」と考えて、一緒に動機や目標を見つけて少しずつ取り組んでいくのが良いでしょう。

アンガーマネジメントは効果が無い?

アンガーマネジメントをしても意味がない、効果がないといった声もよく耳にします。この理由としては「アンガーマネジメントの効果の誤解」などから発生していると言われています。アンガーマネジメントでは、怒りの感情を消すことはできません。あくまでも「怒りという感情に対して適切に付き合う」ことが目的であって、元から「怒りを消す」ことを目的とされてはいません。

また、怒りを感じることや、怒りを表したりすること自体は悪いことではありません。怒りは心理学の中で「自分を守るための感情」だといわれています。人間は怒りを表現できないと逆にストレスが溜まり、心身に悪影響を与えることがあります。暴力や強い言葉などで怒りを表すのではなく、違う表現をする方法を学んでいきましょう。

アンガーマネジメントのやり方とは?

ここからは、アンガーマネジメントを実践する際に行う基本的なやり方を紹介していきます。

1.自分の怒りの強さを10段階に分ける「スケールテクニック」

自分の怒りを強さに応じて10段階にレベル分けをしていきます。これを「スケールテクニック」というのですが、これをすることで自分の怒りを「見える化」して、自分が怒っているかいないかではなく、怒りにも「複数のレベルがあること」に気付けます。そして、レベルに応じた対処法や、怒りを相手に伝えるのか伝えないかなど考える機会を作ることができるでしょう。この怒りは5くらいかな?とレベルを付けることが習慣になると、次に怒りを感じた時にこれは前より上だから6、前より下だから4!と自分の怒りの数値が段々と見えてきます。こうして怒りが見えてくることで、怒りのレベルに合わせた起こり方や、怒らなくてもいいといった判断をする目安になります。

2.6秒ルールで落ち着く

アンガーマネジメントでよく使われている「6秒ルール」です。怒りの感情は衝動的で、発生してから6秒が最高潮で、その後は長続きし辛いといわれています。人によってはこの6秒の間に起こってしまうと、なんであんなことを言ってしまったんだろう・・・と後悔してしまう方もいます。そのため、怒りの感情が発生したらまずは6秒数える癖をつけましょう。最初は子どもと大人が一緒にカウントしながら待つようにしましょう。6秒待ってから怒りのピークが落ち着いてから自分の気持ちを伝えたりするようにしましょう。

3.その場からいったん離れる

例えばですが、何かを提案した時に反対意見を言われて怒りの感情が生じた時に、即座にそれに対して反論してしまうと怒りのピークにいるため、強い口調や相手を否定したり傷つけるような言動などを取ってしまうことがあります。こうなってしまうと人間関係に亀裂が入ってしまうでしょう。そのため、相手にその場を離れることを伝えて、クールダウンするようにしましょう。6秒ルールに近いですが、こちらもよく使われている手法の1つです。発達障害を持つ子どもの場合は、その子の特性に合わせた「落ち着ける空間」を用意しておくとより効果的でしょう。また、その子が離れるのが難しい場合は、他の子どもを避難させても構いません。その時は周囲から危険な物を取り除くようにしましょう。

4.深呼吸をする

人間は怒っている時は呼吸が早く、浅くなりがちです。ゆっくりと深呼吸を行い、呼吸を整えることで怒りが少しずつ落ち着くことがあります。この時に、息を吸う時間よりも吐く時間を長めにするようにしましょう。息を吐ききることに集中することで、自分の意識を怒りの感情から逸らしてリラックスした気持ちへと移行しやすくなります。6秒ルールと組み合わせながら、2,3回深呼吸をしてみましょう。また、頭の中で数を数えながら深呼吸することでも怒りの感情から意識を逸らすことができます。子どもと一緒に行う時には、どちらかが数を数えて息を吸う、息を吐く練習をしてみましょう。その後、子ども1人でも頭の中で数を数えて深呼吸ができるようにしていきましょう。

大人のコミュニケーション方法も大切

大人側の子どもに対する接し方が良くないことで、子どもがストレスを抱えてしまったり親子間で信頼関係を築くことができていない場合もあります。激しく怒っても子どもの行動は変わらないどころか悪化してしまうことさえありえます。もちろん命に関わるような出来事などはしっかりと怒ったほうがいいですが、なるべく叱責したりすることは避けたほうが良いでしょう。

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【まとめ】発達障がい児に大切なアンガーマネジメントとは

ここまでアンガーマネジメントについて紹介をしてきました。アンガーマネジメントを習得することで、日常生活や学校生活だけではなく、将来子どもが社会へ足を踏み入れた時により良い人間関係を構築し、少しでも笑顔で暮らすための力となるのではないでしょうか?感情のコントロールと聞くと難しく感じることもあるでしょう。まずは支援機関や専門家などを頼っても問題ありません。子どもと一緒に学びながら少しずつ習得していけるといいですね!

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