皆さんは、自分の「心の健康」について考えたことがありますか? 体の健康と同じように、心の健康も私たちの生活に大きな影響を与えています。でも、目に見えない「心」の状態は、なかなか気づきにくいものです。
そんな中で「メンタルヘルス」という言葉をみなさんは聞いたことがありますか?毎日を楽しく過ごしたい、イライラや落ち込みを減らしたい、人間関係を良くしたい…そんな願いは、実はみんな「メンタルヘルス」に関係しているんです。
今回はそんな「メンタルヘルス」と「心の健康」、「心理学」ついて紹介をしたいと思います。
メンタルヘルスの基礎知識
メンタルヘルスの定義
メンタルヘルスは英語から来ており、日本語に直すとメンタル(心)ヘルス(健康)となり、メンタルヘルスは「心の健康」という意味になります。
厚生労働省ではメンタルヘルスについて
「メンタルヘルスとは体の健康ではなく、こころの健康状態を意味します。体が軽いとか、力が沸いてくるといった感覚と同じように、心が軽い、穏やかな気持ち、やる気が沸いてくるような気持ちの時は、こころが健康といえるでしょう。」
と述べています。
また、世界保健機関(WHO)では
「メンタルヘルスは、ストレス対処、自分の能力発揮、学習、仕事、地域貢献を可能にする精神的な幸福状態で健康と幸福に不可欠で、意思決定や人間関係、社会形成に影響を与える」
つまりメンタルヘルス(心の健康)とは、毎日を気持ちよく過ごせる状態のことです。具体的には、自分の力を発揮でき、日々の困りごとに対処でき、仕事や勉強に集中でき、周りの人とうまくやれる状態を指します。
心の健康が身体に与える影響
心と体はつながっており、心の状態は体の調子にも影響します。例えば、長い間ストレスや不安を感じていると、血圧が高くなったり、風邪をひきやすくなったり、おなかの調子が悪くなったりすることがあります。逆に、心が元気だと、体の調子も良くなりやすく、病気になりにくいと言われ、前向きな気持ちでいると、運動や健康的な食事、十分な睡眠を取りやすくなります。このように、心の健康を保つことは、体の健康にもとても大切です。
メンタルヘルスの問題と症状
心の健康は、身体と同様に生活の中で日々変化します。時には調子が良くなったり、悪くなったりするのは自然なことです。でも、長い間気分が落ち込んだり、不安が強くなりすぎたりすると、日常生活に支障が出ることがあります。これが「心の健康問題である精神疾患」です。
精神疾患にはさまざまな種類があります。よく聞く言葉では「うつ病」や「不安障害」などがあり、他にもたくさんの種類があります。
ここで大切なのは、心の健康問題には何らのきっかけやサインがあるということです。例えば、長い間眠れない、食欲がない、何もする気が起きないなど、いつもと違う状態が続くことがあります。こういったサインに早く気づくことが、適切な対処へ繋げることができるきっかけとなります。
心理学からみるメンタルヘルスとは
メンタルヘルス(心の健康)を保つ方法は様々ですが、心理学の分野では効果的な方法がいくつか研究されています。今回は認知行動療法とマインドフルネスという2つのアプローチについて簡単に紹介したいと思います。
今回紹介しているものは一例です。人によって疾患の種類や度合いは様々のため、紹介しているやり方が合わない方も当然いらっしゃいます。そのため、1人1人にあった方法を見つけるためにもお近くの医療機関等に相談しにいくのも一つの手段になります。これが出来ないから駄目なんだと思い詰めるのではなく、このやり方は合わなかったから違うやり方を試してみようと考えるようにしてみましょう。
認知行動療法
認知行動療法は、私たちの考え方(認知)と行動が気分や感情に大きな影響を与えるという考えに基づいています。そのため、ストレスや不安、恐怖などの問題を解決するために、考えや行動を柔軟に変えていく心理療法となります。
また認知行動療法は、うつ病や不安障害などの治療に効果があることが分かっています。専門家と一緒に行うのが基本ですが、自身でも取り組むことができます。たとえば、不安や不快感を抱いたときに浮かんだ考えや行動を記録する「思考記録」などを行うことで、自身の思考の癖や偏りに気づくきっかけとなります。ただし、自分で取り組む場合は、始める前に、主治医や専門家に相談してから行うことをおすすめします。
マインドフルネス
マインドフルネスは、「今この瞬間に起こっていることに意識を向け、判断せずに受け入れる」心の状態や実践方法です。この考え方のポイントは、過去や未来ではなく今に集中し、善悪や周りの評価は気にせずに、ありのままを観察することにあります。例えば、「お茶を飲むとき、その香りや温かさをじっくり感じる」「歩くとき、足の裏の感覚や周りの景色に注目する」「食事のとき、食べ物の味や食感をよく味わう」など日々の生活の中で、呼吸や体の感覚、周囲の環境に注意を向けることで実践することができます。
マインドフルネスの効果は幅広く、ストレスの軽減や感情のコントロール向上、集中力アップなどが期待できます。また、自己理解が深まり、身体的な健康改善や対人関係の向上にもつながる可能性があるとされています。
日常生活でのメンタルヘルスケア
心の健康は、生活の中で日々変化します。そのため、日頃のケアがとても重要になってきます。ここでは日々の生活の中で取り入れられるちょっとしたケア方法を3つ紹介したいと思います。
その1:定期的な運動
運動には、ネガティブな気分を発散させる、こころと体をリラックスさせる、睡眠リズムを整えるなどの作用があります。運動の中でもとく有酸素運動に効果的だといわれています。有酸素運動とはウォーキングや軽いランニング、サイクリングなどが当てはまります。
いざ運動をしよう!と言っても難しい場合には、通勤や通学などの日々の生活に取り入れてみましょう。それでもハードルが高いなと思ったら、短い時間でよいので近所を散歩したり、週1回の運動から始めてみるなど少しずつ取り組んでみるようにしましょう。
頑張りすぎると、かえって疲れてしまうので、「ああ、スッキリした!」と思えるくらいの軽さを目標にし、負荷よりも長く継続することが大切です。
その2:マインドフルネスや瞑想
マインドフルネスについては先ほど、紹介させて頂きましたが、「食事のとき、食べ物の味や食感をよく味わう」など日常のちょっとしたことに意識を向けるのがマインドフルネスです。瞑想も難しく考える必要はなく
1.静かな場所で座り、目を閉じる
2.自分の呼吸に意識を向ける
3.息を吸うときと吐くときの感覚に集中する
4.他の考えが浮かんでも、優しく呼吸に意識を戻す
これで瞑想ができてしまいます。瞑想という表現をしましたが、馴染みのある言葉にすると「深呼吸」でOKです。呼吸の基本は「ちゃんと吐く」ことです。まずは「いち、に、さん」数えながら、ゆっくりと口から息を吐き出します。息を吐き出せたら、同じように数えながら、今度は鼻から息を吸い込みます。これを繰り返し、1日5分を目安に始めてみるのがおすすめです。また、瞑想もマインドフルネスを実践する一つの方法となります。マインドフルネスは日常生活の中で少しずつ実践できる心の健康法です。継続することで、ストレス軽減や心の安定など、様々な効果が期待できます。
その3:毎日感謝できることを書き出す
見出しを見て「感謝?」と疑問を持たられた方もいるかと思います。運動や瞑想、深呼吸は「気分転換になる」「心が落ち着く」などの効果があると、紹介してたし、昔どこかで聞いたことがあるけど…と思った方もいらっしゃるかもしれません。
実は「感謝」がメンタルケアにも有効なのです。感謝について研究をした第一人者である米国カリフォルニア大学のロバート・A・エモンズ教授は、1000人以上を対象に調査を行いました。その結果、感謝により「幸福感が高くなった」「人に対して優しくなった」「よく眠れるようになった」「身体的な不調も減少した」などの結果が出ました。毎晩寝る前に、なんらかの出来事に感謝したり、今日あった良いことを書きだすなどをしてみても良いかもしれませんね。
外部リンク
参考元:Robert Emmons “Why Gratitude Is Good” Greater Good Magazine 2010年11月16日
※リンク先は海外のサイトとなっています。
【まとめ】メンタルヘルスってなに?心の健康と心理学
メンタルヘルスは英語から来ており、日本語に直すとメンタル(心)ヘルス(健康)となり、メンタルヘルスは「心の健康」という意味でしたね。心の健康は、私たちの人生の質を大きく左右する大切な要素です。適切なケアを行うことで、誰もが心の健康を保つことができるといわれています。
また、心の健康に関する大きな悩みは、一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けることも大切です。メンタルヘルスへの理解を深め、実践することは、自分自身はもちろん周りの人々の幸せにもつながります。
今日からでも、あなたなりの心の健康法を見つけ、実践してみてはいかがでしょうか。