疲れやすく、何もやる気になれない。楽しかったはずの趣味や友人との交流が面倒になり楽しくない。または、悲しい出来事が起こった際に中々前向きな気持ちになれない日々が続いているなど・・・こんな経験はありませんか?
もしかしたら、あなたは今、うつ病という見えない敵と闘っているのかもしれません。
うつ病は、「こころの風邪」と呼ばれることもありますが、実際にはそれよりもずっと深刻で複雑な病気です。世界保健機関(WHO)によると全世界で約3億人以上がうつ病に苦しんでいるとされており、数え切れないほどの苦悩と闘いの物語があります。
ここで一つ覚えておいてほしいことがあります。「うつ病は治療可能な病気だということです。」適切な支援と治療があれば、多くの人が回復への道を歩むことができるとされています。ここでは、うつ病についての理解を深め、効果的な対処法や治療法について紹介していきたいと思います。
うつ病について知る
うつ病は単なる「気分の落ち込み」ではありません。それは深刻な心の病であり、適切な理解と対処が必要です。すこし掘り下げながらうつ病とは何か?を一緒に確認していけたらと思います。
うつ病の症状・原因
うつ病の主な症状には、持続的な悲しみや空虚感、興味や喜びの喪失、睡眠障害、食欲の変化、集中力の低下などがあります。原因は複雑で、遺伝的要因、環境要因、脳内化学物質の不均衡など、さまざまな要素が絡み合っています。強いストレスを感じる出来事があった場合や長期的なストレス、身体的な病気がきっかけとなることもあります。
多くの人に知って欲しい重要なポイントは「うつ病は個人の弱さや怠慢だけが原因ではない」ということです。
うつ病の現状
現在、うつ病に苦しむ人は全世界で約3億人いると言われています。WHO(世界保健機関)の発表によると
「An estimated 3.8% of the population experience depression, including 5% of adults (4% among men and 6% among women), and 5.7% of adults older than 60 years. Approximately 280 million people in the world have depression (1). Depression is about 50% more common among women than among men. Worldwide, more than 10% of pregnant women and women who have just given birth experience depression (2). More than 700 000 people die due to suicide every year. Suicide is the fourth leading cause of death in 15–29-year-olds.」
WHO.Depression Fact Sheet Overview .2024より引用
※リンク先は海外のサイトになります
和訳すると「世界的に、推定3.8%の人々がうつ病を経験しており、世界中で約2億8000万人がうつ病に患っています。成人のうち5%(男性では4%、女性では6%)が該当します。また、60歳以上の成人の場合は5.7%がうつ病です。
(1)女性は男性よりも約50%多く抑うつを経験します。世界的に見ると、妊娠中の女性や出産後の女性の10%以上がうつ病を経験しています。
(2)毎年、70万人以上が自殺により亡くなっています。自殺は15~29歳の若者において第4位の死因となっています」
このように発表されており、25人に1人がうつ病に苦しんでいることがわかります。また、国内に焦点を向けた場合、厚生労働省の「患者調査(平成29年)」にて、約125万人の人がうつ病(気分障害)で病院を受診していることがわかっています。
日常生活での対処法
うつ病の治療は、医療機関での治療だけでなく、日々の生活の中でも行われます。ここでは、自宅などで誰でも始めることができる対処法を紹介したいと思います。
規則正しい生活リズムの確立
規則正しい生活リズムを保つことは、うつ病対策の基本となるそうです。特に重要なのは睡眠のリズムです。毎日同じ時間に起床し、就寝することで、体内時計を整えることができます。これにより、睡眠の質が向上し、日中の気分や集中力の改善にもつながります。
また、食事の時間も規則的にすることで、よりリズムを整えやすくなります。ただし、急激な変更は逆効果になる可能性があるので、小さな目標から始めて、徐々に理想的なリズムに近づけていくことが大切です。
適度な運動と健康的な食事
運動には、脳内の神経伝達物質のバランスを整える効果があります。特に有酸素運動は、セロトニンやエンドルフィンの分泌を促進し、気分を向上させる働きがあります。なのでウォーキングや軽いジョギングから始めるのがおすすめです。ただし、生活リズムと同様に無理は禁物です。毎日20分〜30分行うのが良いとされていますが、一番は短い時間でもできる範囲で、長く継続することが大切です。
また、食事面では、オメガ3脂肪酸やビタミンB群、葉酸を多く含む食品が脳の健康に良いとされています。魚、野菜、などをバランスよく摂取し、過度の糖分や加工食品は控えめにしてみましょう。
その他にもアルコールは控えましょう。お酒を飲むことで一時的に気分を高めることはできますが、アルコールが神経系に影響を与えることや睡眠の質を低下させてしまうことや、薬物治療の場合にその効果を減少させることがあるなど、うつ病を悪化させるケースがありますので飲酒には注意しましょう。
ストレス管理をしよう
ストレスはうつ病の大きな要因の一つです。なので、ストレス管理は症状の緩和と再発予防にとても重要です。瞑想やマインドフルネスの実践は、日常生活ですぐに実践することができてストレス軽減に効果的です。始めは5分程度から始め、徐々に時間を延ばしていくのがコツです。
また、趣味や楽しみを見つけることも大切で、小さな喜びを日常に取り入れることでストレス耐性を高めることにも繋がります。
専門的な治療とサポート
うつ病の回復には、専門家による適切な治療とサポートが不可欠です。ここでは、主な治療法とその効果について紹介したいと思います。
薬物療法の基礎知識
抗うつ薬は、うつ病治療の重要な選択肢の一つです。主に脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで効果を発揮します。しかし、効果が現れるまでに数週間かかることもあり、副作用の可能性もあります。
よく使われる薬には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬))などがあります。薬の種類や用量は個人の症状や状態に応じて慎重に選択されます。自己判断での服薬中止や用量変更は危険なので、必ず医師の指示に従うようにしましょう。
心理療法による治療
心理療法は、うつ病の根本的な原因に取り組むのに効果的な治療法です。認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)、マインドフルネス認知療法(MBCT)など様々な療法がありますが、今回は、認知行動療法(CBT)について少し紹介したいと思います。
認知行動療法は、うつ病などの精神的な問題を改善するための効果的な治療法の1つです。基本的な考え方は、私たちの思考(認知)と行動が感情に大きな影響を与えるというものです。
治療では、患者さんが自分の否定的な考え方を把握し、それをより健康的な考え方に置き換える方法を学びます。具体的には、ストレスや不安、恐怖などの問題に対処するため、現在の思考や行動を少しずつ柔軟に変化させていきます。考え方を変えることで感情や行動にも良い変化をもたらす心理療法になります。また、NIMH(米国国立精神衛生研究所)が主導して行った研究では、認知行動療法が薬物療法と同等の効果を示したという結果も発表されました。
外部リンク
参考:(NIMH Treatment of Depression Collaborative Research Program (Elkin et al., 1989)
家族や周囲のサポートの重要性
先に述べましたが、うつ病は個人の弱さや怠慢だけが原因ではありません。しかし、うつ病に対する誤解や偏見は、依然として社会に根強く存在しています。「気合いで治る」「怠け者の言い訳」といった誤った認識が、苦しみを増大させ、適切な治療を受ける妨げになることがあります。
うつ病は、本人の意志の力だけでは克服困難な病気であり、原因が複雑な場合もあり、専門的な治療が必要ケースも多くあります。そのため、正しい知識を得て、家族や友人など周囲の人々のサポートが大きな役割を果たします。ただし、サポートすることばかりに目を向けず、サポートする側のメンタルヘルスケアも忘れないようにしましょう。
回復への道のり
小さな目標設定と達成感
うつ病の症状が重いときは、以前はまで出来ていた日常的なことでさえ大きな壁に感じられることがあります。そんなときこそ、小さな目標を設定し、一つずつ達成していくことが大切です。例えば、「今日は10分散歩する」「朝食を食べる」といった簡単な目標から始めましょう。これらの小さな成功体験が、自信と前向きな気持ちを育てます。達成したら必ず自分のことを褒めるようにしましょう。
再発予防と自己ケアの習慣化
うつ病は再発のリスクがある病気です。そのため、症状が改善した後も継続的な自己ケアが重要です。ストレス管理や規則正しい生活習慣の維持、定期的な運動などを日常生活に組み込んでいきましょう。また、自分の状態を客観的に観察する習慣をつけることも大切です。また、気分の変化や睡眠の質、食欲の変化などをノートや手帳などに記録することも大切です。もし悪化の兆候があった場合にも早期発見に繋がるきっかけとなり、定期的に専門家との面談をする時にも効果的です。
【まとめ】うつ病とどう向き合う?メンタル不調からの脱出方法
今回はうつ病についての紹介とその対処法について、少し紹介をさせて頂きました。うつ病は「こころの風邪」と呼ばれ、すぐに治りそうなイメージもあるかもしれませんが、実際には複雑で、遺伝的要因、環境要因、脳内化学物質の不均衡など、さまざまな要素が絡み合っています。そのため、個人の弱さや怠慢だけが原因ではありません。
しかし、うつ病に対する誤解や偏見は、依然として社会に根強く存在しています。誤った認識が、苦しみを増大させ、適切な治療を受ける妨げにもなっています。それでも「うつ病は治療可能な病気です」適切な支援と治療があれば、多くの人が回復への道を歩むことができます。メンタルヘルスについて政府でも様々な政策をしています。
少しでも多くの人が理解を深め、思いやりを持って接することができたら、困っている人が安心して助けを求められる環境が生まれ、互いに支え合うことができたらいいですね。