現代社会において、メンタルヘルスの重要性は年々高まっています。特に若い世代における心の健康管理は、充実した学生生活や将来の社会生活を送る上で欠かせない要素となっています。この記事では、心の健康を保つためのポイントや対処法について、紹介していきたいと思います。
心の危機サインを見逃さないために
メンタルヘルスの問題は、誰もが経験する可能性のある身近な課題です。なるべく早く心の問題に気づくことや対応することが大切です。
心の健康状態をチェックする方法
日常生活における心の健康状態のチェックポイントとして、睡眠の質、食事の規則性、運動習慣などの基本的な生活リズムの確認が重要です。また、「学校や職場などで過ごす時間や日常生活(趣味や家族・友人と過ごす時間)に楽しみを感じられるか」「将来への希望が持てているか」といった心理面での自己評価も大切です。心の状態は日々変化するので、定期的なセルフチェックをすることで、心の変化に早く気づくことができます。
危機のサインを感じたときの初期対応
危機のサインに気づいたら、まず落ち着いて状況を受け止めることが大切です。本人や周囲の人が気づいた場合、信頼できる人(家族、友人、教師、カウンセラーなど)に相談することをお勧めします。話を聴くときは、否定や批判を避け、相手の気持ちに寄り添う姿勢で接することが重要です。
自殺のリスク要因とは
自殺のリスク要因には、学業や進路の悩み、対人関係の困難さ、家庭環境の変化など、様々な要素が関係します。「いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)」のページでも
自殺行動に至った人の直前の心の健康状態を見ると、大多数は、様々な悩みにより心理的に追い詰められた結果、抑うつ状態にあったり、うつ病、アルコール依存症等の精神疾患を発症していたりと、これらの影響により正常な判断を行うことができない状態となっていることが明らかになっています。
とあります。
また、わかりやすい兆候として、食欲低下、不眠、意欲の減退が2週間以上続く場合や、「死にたい」という考えが繰り返し浮かぶ場合があります。これらの症状に気づいたら、一人で抱え込まずに、信頼できる人や相談所や医療機関に早めに相談することが重要です。
メンタルヘルスの基礎知識とセルフケア(予防法)
健康な心を保つためには、適切なセルフケア(予防法)の知識と実践が欠かせません。日々の生活の中で、自分に合ったストレス管理方法を見つけていきましょう。ただし急激な生活リズムの変更は逆効果になる可能性もあるので注意しましょう!
ストレス社会における心の健康管理
現代社会では、学業、人間関係、将来への不安など、様々なストレス要因に囲まれています。これらのストレスに対して、自分なりのストレス解消法を持つことが重要です。運動、趣味、音楽鑑賞など、自分に合ったリラックス方法を見つけましょう。特に重要なポイントは、短い時間でもいいので、できる範囲で長く継続することが大切です。定期的に実践することで、心の健康を保つことができます。
セルフケアの重要性と具体的な方法
セルフケアとは、自分自身の心と体の健康を保つための予防法です。具体的には、十分な睡眠時間の確保、バランスの良い食事、適度な運動などの基本的な生活習慣の維持が重要です。現代のデジタル社会ではスマートフォンやパソコンなどのデジタル機器の利用時間が長くなっています。
特にスマートフォンは生活の中の必需品となり、利用時間が格段に増えています。可能な範囲でスマートフォンの使用時間を制限したり、就寝前の過ごし方を工夫したりすることで、より良い生活習慣を築くきっかけとなります。また、自分の感情を日記に書き留めたり、瞑想や深呼吸、ストレッチなどのリラックス法を実践することも効果的です。
周囲のサポートの活用方法
心の悩みの大きさは人によって様々です。周りから見れば小さな悩みでも、本人にとっては大きな心の傷となっている場合もあります。また、小さな悩みが、精神疾患などの火種となる場合もあります。一人で抱え込まずに、周囲の力を借りることも大切です。友人や家族との対話、学校のカウンセラーへの相談、オンラインの相談サービスの利用など、様々なサポート体制があります。必要に応じて専門家に相談することで、より適切な支援を受けることができます。
主な精神疾患とのメンタルヘルスの関連性
小さな心の傷がだんだんと大きくなると、精神疾患(心の病気)へと発展することが多くあります。ここでは精神疾患を簡単にではありますが、すこし紹介したいと思います。
代表的な精神疾患1:うつ病
うつ病の主な症状には、持続的な気分の落ち込み、意欲の低下、不眠や過眠といった睡眠の乱れがあります。集中力の低下や成績の急な悪化、部活動やサークル、習い事などへの参加意欲の低下なども要注意サインの1つです。これらの症状が2週間以上続く場合は、一度医療機関などの受診を検討されると良いかと思います。
外部リンク
参考:厚生労働省 こころの病気について知る うつ病とは
代表的な精神疾患2:不安障害
不安障害は、過度な不安や心配が日常生活に支障をきたす状態を指します。強い不安(人前での発表に対する極度の恐怖、友人関係における過剰な心配など)が特徴的です。また、不安な気持ちだけでなく、動悸、発汗、めまいなどの身体的な症状として現れることもあります。これらの症状により、学校生活や日常活動に支障が出る場合にはすぐに医療機関などの受診を検討して下さい。
外部リンク
参考:厚生労働省 こころの病気について知る 不安障害とは
その他の関連する精神疾患
摂食障害や適応障害、社会不安障害など、精神疾患は多様です。例えば、美容や健康を意識しすぎた結果、食事量や体重への過度なこだわりが生まれて、摂食障害になるケースやまた、長期的なストレスによる身体化症状として、頭痛や腹痛などの身体症状が現れることもあります。症状の種類や程度は個人差が大きいため、個別の状況に応じた対応が必要です。
一人で悩まず、気軽に相談しましょう
精神疾患は立派な病気です。また、一般的な病気と同じで早期の対応がとても重要です。「恥ずかしい」「こんなことで」「これくらいなら大丈夫」と一人で抱えたり、我慢しすぎないことです。家族や信頼できる友人に相談しても良いですし、症状が2週間以上続く場合や、日常生活に支障が出始めた場合には、専門家への相談をすることも大切です。学生であれば、スクールカウンセラーや保健室の先生に相談することから始めるのも良い方法です。
他にも地域の保健所や精神保健福祉センター、若者向けの相談窓口など、様々な専門機関が利用可能なので一度調べておくと、いざという時に役立ちます。
メンタルヘルスの健康を維持する予防と回復のための方法
メンタルヘルスの健康を維持・回復するためには、様々な心理療法や自己ケアの方法があります。ここでは、専門家から支持されている効果的な方法と、日常生活で実践できる方法を紹介します。
コラム法
コラム法は、認知行動療法の1つで、思考を整理し、偏った考え方を修正する方法です。6つのコラム(状況、気分、自動思考、考えの誤り、適応的思考、新しい気分)に分けて記入していきます。例えば、「テスト勉強がうまく進まない」という状況で、「自分はダメな人間だ」という否定的な考えが浮かんだとき、その考えを客観的に見直し、「今回は計画を立て直して、できるところから始めよう」といった建設的な考えに修正していきます。
エクスポージャー法
エクスポージャー法は、認知行動療法の1つで、不安や恐怖を感じる状況に段階的に向き合っていく方法です。例えば、人前で発表することに強い不安を感じる場合、最初は少人数の前で短い発表をする練習から始め、徐々に人数や発表時間を増やしていきます。この過程で、不安が自然と低減していくことを体験的に学びます。実践の際は、事前に不安レベルを数値化し、自分のペースで段階的に取り組むことが重要です。
感情焦点化療法
感情焦点化療法は、自分の感情に向き合い、理解を深める方法です。否定的な感情を抑え込むのではなく、その感情が生まれた背景や理由を探ります。例えば、怒りや悲しみを感じたとき、その感情を日記に書き留めたり、信頼できる人に話したりすることで、感情を整理し、より健康的な形で表現する方法を学びます。
自宅でできる療法
自宅で行える療法として3つ紹介します。
1つ目は「4-7-8呼吸法」です。心と体をリラックスさせる目的で行います。4秒かけて鼻から息を吸い、7秒間息を止め、8秒かけて口からゆっくりと息を吐きます。この一連の呼吸を3-4回繰り返すことで、自律神経を整え、不安や緊張を和らげることができます。
2つ目は「グラウンディング(5-4-3-2-1法)」です。不安や緊張が強いときに効果的な方法です。「見えるもの5つ」「触れるもの4つ」「聞こえる音3つ」「匂い2つ」「味わえるもの1つ」を順番に意識します。自分の周囲にあるものごとに意識を持っていくことで、不安な気持ちやネガティブな思考から気持ちを切り離し、心を落ち着かせる方法です。また、マインドフルネスの実践方法の一つとして、特に初心者にとって取り組みやすい技法として活用されています。
3つ目は「感情日記」です。感情の変化やパターンを理解することで、より効果的な対処方法を見つけることができたり、幸せを感じやすくなる効果が期待できます。その日にあった心が動く出来事(感情の変化)を書いていき、そこにプラスとして感じた感情とその強さ(0-100)も合わせて記録していきます。以下はその書き方の例となります。
- どんなできごとだったのか(例:落ち込んでいた友達を励まし、「ありがとう」と言われた。 授業でぼーっとしてたら突然指名され、へんな回答をしてしまった。)
- 思ったこと(例:普段助けてくれる友達の役に立てて良かった。 いきなり指名されて驚いた。次は授業に集中しようと思った。)
- そのことに対しての感情(例:嬉しさ(85/100)恥ずかしさ(90/100)
ポイントは、出来事を詳しく書く必要もなく、自分が感じたままのことをそのまま書きましょう。(ポジティブなことでもマイナスなことでもOK)
ここで紹介した予防法や回復方法は、専門家の指導のもとで行うことで最も効果を発揮しますが、基本的な考え方を理解し、日常生活で活かすことができます。また、無理のない範囲で継続することがポイントになります。ただし、症状が深刻な場合や不安がある場合は、必ず専門家に相談した上で、適切な指導のもとで実践するようにしましょう。また、効果を実感するには、人によっても異なりますが、時間が必要となるので焦らずに向き合うことが大切です。
【まとめ】自殺リスクにどう気づく? 心の健康チェック(メンタルヘルス)と予防策とは
心の健康チェック(メンタルヘルス)を定期的に行うことが、精神疾患やそれに伴う自殺のリスクを減らす大きなポイントになります。 心の傷は、初めは小さくても徐々に大きくなったり、複数の傷が相まって大きな傷(精神疾患)へと変わる可能性もあります。自分でもできる療法を活用し、ストレス管理や予防。なんらかの症状がでてしまっていても、続けることでの回復の一歩となりますので取り入れてみてはいかがでしょうか。
そして、勇気がいるかもしれませんが、一人で悩みを抱えずに、信頼できる人(家族・友人、先生、上司など)に相談したり、専門の機関(相談所や医療機関)を活用するようにしましょう。