「最近、仕事のストレスがヤバい…」
「部下のメンタルケア、どうすればいいんだろう…」
こんな悩みを抱えていませんか?実は仕事をしている数多くの人たちが、このような悩みを抱えています。実際、厚生労働省の調査によると、なんと働く人の半数以上がストレスを感じているそうです。今回は、そんなメンタルヘルス対策について、解決方法をご紹介していきます。
職場のメンタルヘルス問題の現状
その1:なぜ職場のメンタルヘルスが重要なのか
近年、職場におけるメンタルヘルス不調が大きな社会問題となっています。厚生労働省の「令和4年度労働安全衛生調査」によると、仕事や職業生活に関する強い不安やストレスを感じている労働者の割合は52.0%と、実に働く人の半数以上がストレスを抱えている状況です。特に最近は、若手社員(20代~30代)のメンタルヘルス不調が増加傾向にあり、日本生産性本部の「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケートでは、若手社員のメンタルヘルス不調を課題として挙げる企業が67.8%に達しています。
私も調べてみて想像以上に多いことに驚きました。ただ、ストレスと言ってもどこから???という疑問もありますよね。これについては人によって基準が異なるため、明確な答えは言えませんが、こんな経験をしたことはありませんか?
- 終わらない仕事に追われる毎日
- 職場の人間関係に気まずい思いをしている
- リモートワーク中や職場内で孤独感を感じる
これらはひとつの例ですが、もし感じていたらストレスゲージ上昇中のサインです。では、なぜこれほど多くの人々がメンタルヘルス不調に悩まされているのでしょうか。主な要因として以下の3つが挙げられます。
1つ目は、長時間労働や過重な業務です。労働時間が長くなればなるほど、心身の疲労が蓄積され、うつ病などの精神疾患のリスクが高まります。実際に、月80時間以上の残業をしている労働者は、そうでない労働者と比べて精神疾患を発症するリスクが約2倍高くなるというデータもあります。
2つ目は、職場でのハラスメント問題です。パワーハラスメントやセクシャルハラスメントは、被害者の心に深い傷を残し、重度の精神的ストレスの原因となります。厚生労働省の調査では、パワハラを受けた経験がある人の約6割が「強い不安やストレスを感じた」と回答しています。
3つ目は、職場でのコミュニケーション不足です。特にコロナ禍以降、リモートワークの普及により、直接的なコミュニケーションの機会が減少しました。これにより、孤立感や不安感を抱える従業員が増加しているそうです。
皆さんは大丈夫でしたか?3つの中で私が特に気になったのが「月80時間以上の残業(1日4時間)」です。実はこれ、過労死のラインなんです。精神疾患はもちろんですが、命の危険も出てきます。労災認定基準の場合には少し異なりますが、自身も含め、周りの人でそんな人がいないか気にかけてみて下さい。
その2:企業が抱える見えない損失
ここまでの話では、「でも、それって個人の問題じゃないの?」とそう思う方もいるかもしれません。でも、実はそうでもないんです。
メンタルヘルス不調の増加は、企業経営にも深刻な影響を及ぼしています。企業が直面している具体的な課題について、紹介したいと思います。
まず最も大きな問題は、生産性の低下です。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、メンタルヘルス不調により、従業員一人当たりの労働生産性が平均で20~30%低下するとされています。
次に深刻なのが、離職率の上昇です。公益財団法人日本生産性本部の調査(2023年)によれば、メンタルヘルス不調による休職者のうち、約40%が最終的に退職を選択しているという結果が出ています。特に入社3年以内の若手社員の場合、その割合は50%以上に上ると報告されています。人材の採用・育成にかかるコストを考えると、これは企業にとって大きな損失となります。
さらに、職場の雰囲気悪化も見逃せない問題です。「職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査」では、メンタルヘルス不調者が出た職場の約70%で「周囲の従業員の業務負担が増加した」という報告もありました。一人の従業員がメンタルヘルス不調により休職すると、残された従業員の業務負担が増加し、それによって新たなメンタルヘルス不調者が発生するという「負の連鎖」が起きやすくなります。大企業のように、人数が多い企業は影響が少ないかもしれませんが、中小企業で従業員数が少ない企業ほどその影響は大きくなります。
外部リンク
参考:日本生産性本部「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート
このように、従業員の目線から見ても、役職を担う経営陣から見てもメンタルヘルス対策はとても重要なのです。
予防的アプローチの重要性
メンタルヘルス対策が重要であることはわかりましたが、実際どうすれば良いのでしょうか? 実は、意外と身近なところから始められる対策があるので一緒に確認していきましょう。
ストレスチェックの活用
職場のメンタルヘルス対策において、カウンセラーが注目している、ストレスチェックという予防的ツールです。2015年12月から従業員50人以上の事業場では、毎年1回のストレスチェックが法律で義務付けられました。その結果、ストレスチェックの実施率は年々上昇しており、従業員50人以上の事業場での実施率は90.5%に達しています。具体的なストレスチェックの活用方法として、産業カウンセリングの現場では以下の3つのステップが推奨されています。
- 全従業員を対象とした定期的な実施(年1回以上)
- 心理分析の専門家による結果の統計的分析と職場環境の評価
- カウンセリング専門職を交えた具体的な改善施策の実施
例えば、ある製造業の企業では、臨床心理士の助言のもと、ストレスチェックの分析結果から、特定の部署で「仕事の量的負担」と「職場の支援体制」に課題があることが判明しました。この結果を受けて、カウンセリング体制を整備し、定期的な上司との面談機会を設けたところ、翌年のストレスチェックでは同部署のストレス度が20%低下したという事例があります。
このように、ストレスチェックにより職場改善をすることができます。だた、法律で義務付けているのは1のストレスチェックまでとなります。そのため、上記のように「チェック」「分析」「実施」の3ステップまで実施しているのはそのうちの60%程度に留まっています。手間やコストの部分もありますが、重要なのは、「そのチェック結果を職場環境の改善にどう活かすか」ですので、チェックで終わらずにその対策まで実施するようにしましょう。
労働時間管理がカギ!
続いて、メンタルの不調を防ぐためには、適切な労働時間管理が不可欠です。実際に、産業カウンセラーへの相談内容の約40%が「長時間労働によるストレス」に関連しているというデータもあります。厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」(令和4年度)によると、精神障害の労災認定件数は過去最多の720件に達し、そのうち約30%が長時間労働に起因していました。そのため、あるIT企業では、カウンセリング専門職の意見を取り入れながら
- 20時以降の残業禁止
- 勤務間インターバル制度(11時間)の導入
- 有給休暇の取得率目標設定(80%以上)
- 産業カウンセラーによる定期面談の実施
このような施策を実施した結果、従業員一人当たりの月平均残業時間が45時間から20時間に減少し、メンタルヘルス不調による休職者が前年比50%減少したそうです。
日本生産性本部の調査によれば、労働時間管理を徹底している企業では、従業員の心理的ストレス度が平均で25%低下し、仕事満足度が15%向上したというデータも報告されています。このように、ストレスチェックを元にした心理カウンセリングと働き方改革の両方を行うことが重要です。
外部リンク
参考:厚生労働省 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況
外部リンク
参考:厚生労働省 ストレスチェック制度が始まりました
働きやすい職場環境の作り(職場の雰囲気を変える)
ということで、従業員にとって働きやすい環境づくりが大切なことがわかりました。働きやすい環境づくりをしていく上で、意識することの1つとして「心理的安全性」という言葉がありますが、ご存知でしょうか?
簡単に言うと「失敗を恐れずチャレンジできる環境」のことになります。「チームの中で、誰もが安心して意見を言えたり、失敗を恐れずにチャレンジできたりする状態」を指します。産業カウンセラーや組織心理学の専門家たちが、メンタルヘルスケアの観点から特に重視している概念です。
心理的安全性が高い職場では、従業員のメンタルヘルス不調のリスクが約40%低減するという結果が報告されています。また、日本労働研究・研修機構の調査では、心理的安全性が確保された職場では、従業員の約75%が「働きがいを感じている」と回答しており、カウンセリング相談件数も30%減少しているとのデータがあります。
例えば、「上司と部下が月に1回以上、心理面での状況確認を含む対話の機会を作る」「多様な意見や価値観を受け入れる。失敗を責めない環境づくりの促進」「メンタルヘルス専門家への相談機会の確保」「評価基準を明確にする」などの方法で実際に取り入れることもできます。
外部リンク
参考:厚生労働省 労働者の心の健康の保持増進のための指針
資格の取得などメンタルヘルスケアのプロを育てよう
最後は、人事部門や管理職向けのメンタルヘルスの基礎知識習得や資格取得の支援です。例えば、「メンタルヘルス・マネジメント検定」や「産業カウンセラー」などの資格取得を奨励する企業が増加しています。
関連記事
心理カウンセラーになるには? メンタルケアに関する資格と取得方法
これらの資格を持つ従業員が職場に増えることで、メンタルヘルスケアの質が向上し、より細やかなサポートが可能になります。人事担当者や管理職が心理学の基礎やカウンセリング方法についての知識を得ることで、職場での気づきの質が向上します。
また、こうした知識や資格の取得は、キャリアアップにも繋がります。社内での評価や就職転職時の武器になります。
外部リンク
参考:大阪商工会議所 メンタルヘルス・マネジメント検定
外部リンク
参考:一般社団法人日本産業カウンセラー協会 産業カウンセラー
【まとめ】ストレスの少ない職場づくり 精神疾患を防ぐメンタルヘルスと職場環境とは
ストレスの少ない職場づくりは、単なる福利厚生ではなく、企業の持続的な成長に直結する重要な経営課題です。予防的なアプローチと適切なサポート体制の構築、そして心理的安全性の確保が、健全な職場環境づくりの鍵となります。
また、メンタルケアの重要性が年々増していることからも、メンタルケアの基礎知識の習得や資格取得は、個人のスキルアップだけでなく、組織全体の成長にもつながる有効な投資といえます。一般従業員の方も役職に付かれている方も継続的な取り組みと改善を通じて、誰もが安心して働ける環境を目指していくためにメンタルヘルス対策についての知識を増やしていきましょう。