近年増え続けるうつ病や依存症、不安障害といった精神疾患ですが、一度かかってしまうと治らないのではないか?という心配が多くあります。
その心配から、医療機関を受診して精神疾患と診断されることへの恐怖が生まれてしまい、中々受診できずに結果として対処が遅れて、重症化してしまうなんてことがあります。
今回はそんな精神疾患に対する心配事であったり、誤解などを解いていくためによくある誤解や、精神疾患を予防するメンタルヘルスケアなどを紹介していきます。
精神疾患って治らないの?
誤解を招かないように先にお伝えすると、精神疾患は「完治」しないといわれています。ここで使った完治とは、「治療を終えて病気の症状が完全に消失した状態」を指しています。これは身体医学などで用いられる完治です。精神疾患ではこの完治はしないといわれています。
ですが、治らない訳ではありません。精神疾患が治るというのは「日々の生活の中で感じている困りごとが解決したり、緩和したりする状態」を指します。つまり「病気の症状がほぼ消失し、精神的に安定している状態」まで回復するとされています。この状態を「寛解(かんかい)」といいます。
精神疾患はどうしても再発しやすい病気であり、一生付き合っていくことになります。そのため、治らないという誤解に繋がってしまうことがあります。
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参考:はたらく人のメンタルヘルス・ポータルサイト 寛解と完治
また、精神疾患の1つ「統合失調症」はかつて早発痴呆や精神分裂病と呼ばれ、基本的に治りにくい病気だと考えられていた時代もあります。それが、1950年代ごろに有効な治療薬が発見され、患者さんの治療や社会復帰が少しずつ容易になり始めたようです。
現代では治療薬だけではなく、社会復帰のための支援システムも整備され始めているため、かなり環境が変わっているのですが、それでも昔のイメージが強く残ってしまっていることも誤解に繋がってしまう原因のようです。
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参考:公益社団法人 日本精神神経学会 統合失調症について
現代ではこころの病期はほとんど回復するとされています。ですが、発見が遅れてしまうとその分治療にかかる時間も長くなりますし、悪化してしまい本人が感じる苦痛も大きくなってしまう可能性もあります。
ですので、できるだけはやく早期発見し、早期に治療にあたるのが良いとされています。精神疾患の初期症状には
- 睡眠や食欲の異常
- 元気が出ない
- イライラする、怒りっぽい
- 理由もないのに、不安な気持ちになる
など、この他にも様々なものがあります。もしも、原因がよく分からないのに体調不良が続いていたり、上記以外にも何か変だなと感じることが続いていて日常生活に支障が出ている場合は、一度医療機関を受診することをおすすめします。
どこを受診すればいいか分からない場合は、保健所や保健センター・精神保健福祉センターなどに相談することも可能です。
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精神疾患になるのはこころが弱いから?
「うつ病や依存症になる奴はこころが弱いからだ!」「しっかりしていればそんものにはならない!」あまり聞かなくはなりましたが、今でもそうおっしゃる方がいます。ですが、そんな事はありません。
精神疾患は脳内の神経伝達物質の偏りや、心因性、内因性、外因性など様々な要因が考えられていますが、はっきりとこれだという原因はいまだに判明していません。そして「誰にでも起こり得る病気」です。それを気力や根性といった精神論で治すことはできません。
精神疾患を回復するためには、適切な治療を受け、しっかりと休息を取ることが大切です。そして社会復帰をするために、適切なサポートを受けることも重要です。
精神疾患の治療に使う薬は依存しそうで怖い
これは誤解ともいえますし本当ともいえます。一昔前は、「多剤大量療法」といって複数の種類のたくさんの薬で治療をされていました。これは身体機能や精神機能の低下を招いたり、経済的な負担も大きくなるなど様々な問題がありました。また、「睡眠薬」や「抗不安薬」などに依存性があるのも事実です。
ですが、今ではなるべく少ない種類の薬で、治療をすることが推奨されていますし、治療薬も日々進化しています。その結果、段々と依存するリスクは減っているといわれています。
ですので、主治医から言われた量の薬をきっちり守って飲むことが大切です。自分の判断で決められた量より増やしても減らしてもいけません。どちらでも再発のリスクや、薬による副作用のリスクなどがあります。
心配ならばその旨をきちんと主治医に伝え、相談をしてより良い解決策を見つけるようにしましょう。
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参考:公益社団法人 全国精神保健福祉連合会 多剤大量処方は改善されたか
偏見と誤解が精神疾患者を苦しめる
偏見や誤解からくる発言によって、精神疾患の傾向がみられる本人が「自分が弱いからいけないんだ・・・」と感じて自分を責めてしまい、更に苦しみ悪化する。それを見て更に言われる言葉が・・・と悪循環によって苦しみが増加してしまいます。
精神疾患に対して正しい知識を持ちましょう。インターネットや書籍など様々なもので精神疾患とはどういうものなのかを学ぶことが出来ます。
また、少し内容が異なる部分もありますが、心理カウンセラーなどの資格などを学ぶことも良いでしょう。国家資格である「公認心理士」や民間資格の「臨床心理士」は様々な受験するための条件がありますが、民間資格の「産業カウンセラー」など様々なものがあります。詳しくはこちらの記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
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日々のメンタルヘルスケアが精神疾患の予防に繋がる
メンタルヘルスケアにはいくつかの段階がありますが、ここで紹介するのは「セルフケア」です。日常生活や社会生活を営む上で、どうしてもストレスと直面する機会があります。出来れば避けたいものですが、避けられるものではありません。
このストレスと上手く付き合っていく術を見つけることで、精神疾患の予防に繋がることもあります。ですが、これをしていれば100%回避できると断言はできません。その点をご注意下さい。
まずは、自分のストレスサインに気付きましょう。気持ちや気分が乗らない、何もないのに不安や緊張感が続くといった「こころからのサイン」と、食欲がない、眠れない、動悸がするといった「からだのサイン」、そして怒りっぽくなったり、身だしなみが急にだらしなくなる、飲酒・喫煙などの量が増えるといった「行動のサイン」などがあります。
このようなサインが出始めたら要注意!ストレスが溜まっているかもしれません。自分なりのストレス発散法を行いましょう。
サインに気付くためにも、ストレス発散をするためにも自分のことをよく知る必要があります。どんなことでストレスを感じやすいのか、どんなことをすればストレスを発散しやすいのかなど、日々の生活の中で探していきましょう!
いつもならストレスが発散できるのに、今回はやけに長引く・・・。もしも2週間以上続いてる場合は、早めの受診が推奨されています。医療機関を頼ること、そして精神疾患は恥ずかしいことではありません。遠慮なく頼るようにしましょう。
【まとめ】うつ病や依存症などの精神疾患は治らない?よくある誤解やメンタルヘルスケアを紹介
今回は精神疾患にまつわる誤解などを一部にはなりますが紹介してきました。今回紹介したもの以外にも、誤解はまだまだあります。そして偏見もあります。
少しでも誤解や偏見を減らし、精神疾患で悩む方が治療に専念して、社会復帰しやすい環境へとなっていくためにも、正しい知識を学びましょう!