皆さんは、心の悩みを誰かに相談したいと思ったことはありませんか?日々の生活で感じる不安やストレス、人間関係の悩みなど、誰にも相談できずに抱え込んでしまうことも多いものです。
そんな時、専門的な立場から私たちの心に寄り添ってくれるのが心理カウンセラーです。今回は、この心強い味方である心理カウンセラーの仕事について紹介していきたいと思います。
心理カウンセラーの仕事とは
どこで、どんな仕事をするのか
心理カウンセラーってどんなことをする人か、知っていますか?心理カウンセラーの一番大切な仕事は、相談者(カウンセラーの世界では「クライアント」と呼びます)の気持ちに寄り添い、心のケアをすることになります。友達や上司、家族には話しづらい悩みでも、専門家として優しく受け止めてくれる存在です。学校や病院、一般企業や福祉施設など、私たちの身近にある様々なところで活躍しており、心の健康を保つ為にとても大切な役割を担っています。
厚生労働省の令和4年労働安全衛生調査によると、職場でのメンタルヘルスケア対策に取り組んでいる事業所は65.8%もあり企業でも従業員のメンタルケアを行うようになってきました。企業以外の例として、全国の公立小中学校におけるカウンセラーの配置率も、文部科学省の調査結果によると約87%に達していることもわかりました。
また最近では、新型コロナウイルスの影響もあり、対面だけでなく、スマートフォンやパソコンを使ったオンラインカウンセリングも広がってきています。このように、心理カウンセラーは私たちの心の健康を支える専門家として、ますます重要な存在となっています。
では具体的にどんな相談ができるのでしょうか?
例えば・・・
- 学校や職場でのストレス(テストや締め切りのプレッシャー、人間関係の悩みなど)
- 家族との関係(親子げんかが多い、話が通じないなど)
- 友達や恋人との付き合い方
- 「なんだか気分が落ち込む」「やる気が出ない」といったメンタルの不調
- 将来の進路や目標について
などの相談ができます。カウンセリングの方法も、ただ話を聞くだけじゃありません。認知行動療法という「考え方のクセ」を見直す方法や、アートセラピーという絵や音楽を使ったリラックス法など、様々な専門的な技法があります。これらの技法を使いこなすために、カウンセラーは「公認心理師」や「臨床心理士」といった資格を取得したり、専門的な勉強を重ねています。
また、カウンセリングはうつ病などの精神疾患でないと、利用しにくい雰囲気を持っていた方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。何か言えないことや相談したいことがある方は一度利用してみても良いかもしれませんね。
参考2:文部科学省 令和3年度スクールカウンセラー実践活動事例集
心を癒すメンタルケアの方法
心理カウンセリングって、実際どんな風に進んでいくのか気になりますよね。初めての方でも安心して相談できるよう、基本的な流れをご紹介したいと思います。
カウンセリングの進め方
まず、カウンセリングは「初回面談」から始まります。ここでは、リラックスした雰囲気の中で、今の悩みや困っていることを自由に話していきます。心理カウンセラーは、相談者の話をじっくり聴きながら、どんなサポートが必要かを一緒に考えていきます。不安な気持ちを抱えている方が多いのですが、日本心理臨床学会の報告によると、初回相談後に「話せてほっとした」「気持ちが整理できた」という感想が多いそうです。
その後のカウンセリングでは、相談者一人ひとりの状況に合わせて、様々な専門的な技法を組み合わせていきます。カウンセリングは通常50分程度で、相談内容に応じて週1回や月1回など、ペースを調整して行っていきます。その途中で「今の方法が合っているかな?」と振り返る時間も大切にしています。
カウンセリングの終了時期は、相談者の状態や目標の達成度を見ながら、カウンセラーと相談して決めていきます。平均的な相談期間は3~6ヶ月程度とされていますが、相談内容やクライアントの状態など一人ひとりに合わせて柔軟に対応していくため、一概にどれくらいの期間カウンセリングが必要かは言えません。
カウンセリングに使われる主な技法
心を癒すカウンセリング技法は様々ですが、まず注目されているのが「認知行動療法」です。これは、つらい気持ちの原因となっている「考え方のクセ」に気づき、より柔軟な考え方を見つけていく方法です。厚生労働省も、うつ病などの治療に有効な技法として推奨しています。例えば、「失敗したら周りの人に嫌われる」という考えが強い人に対して、「失敗は誰にでもあること」「失敗から学ぶこともある」といった新しい視点を一緒に探していきます。
2つ目は「マインドフルネス」という技法です。今この瞬間の体験に意識を向け、リラックスした状態で自分の気持ちを観察する方法です。スタンフォード大学の研究では、継続的な実践でストレス軽減効果が確認されています。
3つ目は「表現療法(アートセラピー、箱庭療法など)」です。言葉にしづらい気持ちを、創作活動(絵画や箱庭、音楽やダンスなど)を通して表現することで、心の整理をしてく療法になります。
このように、心理カウンセリングでは、科学的な根拠に基づいた様々な技法を用いながら、一人ひとりの心に寄り添ったケアを行っています。「専門的な技法」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、実際はクライアント(相談者)が無理なく取り組めるような内容となっています。
心理カウンセラーに必要な資格やスキル
最後はカウンセラーに必要な資格やスキルについて紹介したいと思います。
あなたも持っているかも?カウンセラーの素養
「人の話を聴くのが好き」「誰かの心の支えになりたい」。そんな気持ちをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
実は、この気持ちが心理カウンセラーになる為に大切な第一歩なんです。次に大切なのは相手の話をしっかり聴き、「そう感じたんですね」「それは大変でしたね」と共感しながら受け止めていく「傾聴力」です。特別な才能がなければできないことではないので、普段の生活の中で少しずつ磨いていけるスキルです。
「いやいや、そうは言っても資格とかも必要でしょ!?」という声もあるかもしれません。もちろん、専門的な知識も必要になりますが、上記のようにカウンセラーになる為に何より大切なのは、人の気持ちに寄り添おうとする温かい心です。
そして、その次に「知識を身につけ、より成長したいから勉強をしよう!」という向上心です。他には、クライアントのプライバシーを守る誠実さも欠かせませんが、これも特別なことではありませんよね。友達の秘密を守れる人なら、きっと大丈夫です。
また、日本臨床心理士会の調査によると、カウンセラーを目指すきっかけは「友人や家族の相談相手になることが多かった」「自分の経験を活かしたいと思った」という理由が多いそうです。つまり、日常生活での経験が、専門家としての第一歩に繋がっており、人を思いやる気持ちと、学ぶ意欲があればカウンセラーになることはできるんです。
専門資格について
メンタルヘルスケアの重要性が高まる中、専門資格を持つカウンセラーの需要も増えています。心理系の国家資格は「公認心理師」という資格です。2017年に誕生したこの資格は、心理職の国家資格として初めて制定されました。医療、教育、福祉など、幅広い分野で活躍できる資格として注目されています。厚生労働省の発表によると、2024年1月時点で約6万人が資格を取得しているそうです。
公認心理師の取得方法は主に2つ。
- 大学で心理学を学び、大学院を修了後、試験に合格する
- 大学で心理学を学び、実務経験を積んでから試験に合格する
ということで、「大学で心理学を学ぶこと」が最低条件となるため、場合によっては少しハードルが高くなります。
公認心理師に続き、もう一つ有名な資格が「臨床心理士」です。こちらは、1988年にスタートした民間資格ですが、長年の実績があり、高い専門性を持つ資格として評価されています。心理療法や地域支援など、幅広い心理臨床活動に従事しており、公認心理師と併せて取得する人も多くいます。こちらも受験するための前提条件として、「大学院修了」という壁があるため、場合によっては少しハードルが高くなります。受験資格を得て、試験に合格することで、臨床心理士の資格が取得できます。
このほかにも、企業や組織のメンタルヘルスケア支援を主とした「産業カウンセラー」など、心理学の資格は色々とあります。「難しそう…」と思われるかもしれませんが、一歩ずつ着実に進めば必ず道は開けます。「今から大学に行くのは・・・」という方でも挑戦が可能となる資格が多くあるので安心して下さい。
また、ここまで資格について話をしましたが、「心理カウンセラー」になる為に、必須な資格はありません。心理の知識やカウンセリングスキルを身につければ、誰でも心理カウンセラーになることはできるんです。「じゃあなぜ資格を取得するのか?」という疑問が出るかもしれませんが、それは知識の証明や活動場所を広げる為に、クライアントや雇用主に信頼してもらう必要があるからだと思います。なので、信頼さえ得られれば、国家資格、民間資格関係なく、心理カウンセラーとして活動することは可能となります。
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【まとめ】心理カウンセラーの仕事とは? メンタルを支えるケアと取り組み
現代社会では、誰もが心の健康管理の必要性を感じる時代となっています。心理カウンセラーは、私たちが抱える様々な悩みや不安に、専門的な知識と経験を活かして向き合ってくれる心強い存在です。一人で悩みを抱え込まず、必要な時には気軽に相談できる専門家として、心理カウンセラーの存在は、これからますます重要になっていくはずです。
また、心理カウンセラーを目指すなら、一番大切なのは「人の気持ちに寄り添おうとする温かい心」を軸に、自分の興味のある分野や働きたい場所を考えてみましょう。そうすることで、必要な資格なども見えてきます。資格取得は確かに時間とお金がかかりますが、人々の心の健康をサポートできるやりがいのある仕事です。
夢への第一歩として、ぜひ資格取得も視野に入れながらチャレンジしてみてはいかがでしょうか?