近年、メンタルヘルスケアへの注目が高まっていますが、特に統合失調症患者さんへの支援は慎重に考える必要があります。なぜなら、統合失調症は100人に1人が経験する身近な精神疾患であり、患者さんとその家族は様々な心理的課題に直面するからです。今回は、統合失調症の方々が抱える心理的な課題と、その支援方法について、紹介していきたいと思います。
統合失調症患者が経験する心理的な課題とは
みなさんは統合失調症についてどれくらい知っていますか? まず、統合失調症は数ある精神疾患の1つになります。特に10代後半から20代前半での発症が多いため、メンタルヘルスケアの専門家による早期発見がとても大切になってきます。とはいってもどんな症状があるのか?まずは症状などについて確認していきましょう。
統合失調症の症状による不安と向き合う(理解と支援のポイント)
統合失調症の症状は、大きく分けて3つのタイプがあります。
まずは1つ目「陽性症状」についてです。陽性症状は、普段の状態に何かが加わる症状のことです。
- 実際には聴こえないない声が聞こえる「幻聴」
- 誰かに見られている気がする。監視されている感じがするといった「被害妄想」
- 自分の考えが周りに漏れている気がする「思考伝播」
といった体験をします。日本統合失調症学会の統計によると、統合失調症の方の約80%が何らかの幻覚や妄想を経験するそうです。
2つ目は「陰性症状」です。
陰性症状は、普段できていたことができにくくなる症状です。「感情が表現しづらくなる」「やる気が出にくくなる」「人と話すのが億劫になる」このような症状は、周りからは「怠けている」と誤解されることもあり、本人さんの心理的負担になりやすいんです。
最後3つ目は「認知機能障害」です。
認知機能障害は「注意力が続きにくい」「新しい情報を覚えるのが難しい」「考えがまとまりにくい」といった困難を経験することがあります。このような症状があると、「自分はおかしくなってしまったのかな?」「誰にも相談できない…」という気持ちになりがち。特に若い方の場合、学業や部活動、アルバイトなど、それまで普通にできていたことができなくなることへの不安も大きいです。
外部リンク
参考:日本統合失調症学会「統合失調症の基礎知識」より
社会生活での課題と必要な支援
内閣府の調査によると、統合失調症に対する理解がある人は全体の約40%程度。つまり、まだ60%の人が十分な理解を持っていないということになります。特に若い世代の方は、就職活動や学校生活での人間関係に不安を感じやすいものです。「メンタルの不調を話すと、周りから変な目で見られるんじゃないか…」って心配になりますよね。実際、統合失調症の方の就労率は一般の約3分の1という統計もあります。
このように、統合失調症を含む精神疾患への偏見って、まだまだ根強いんです…。
でも、最近は企業の意識も変わってきていて、メンタルヘルスケアに積極的な会社も増えています。また、同じ経験を持つ仲間と出会えるピアサポートグループなども各地で活動しています。少しずつではありますが、一人で抱え込まなくていい時代になってきています。
では、具体的にどのようなメンタル支援が効果的なのでしょうか?次は、専門家による支援から、家族によるサポートまで、実践的な方法をご紹介していきます。
統合失調症患者へのメンタルサポート方法を考える
専門家による支援の種類と活用方法
統合失調症の治療では、専門家による適切なサポートが回復の大きな鍵となります。まず中心となるのが、「薬物療法」「精神療法」「作業療法」です。薬物療法では、薬の研究が進み、最新の抗精神病薬は、眠気や体重増加などの副作用が少なくなるよう改良されています。
次に、精神療法ではメンタルクリニックやカウンセラーによる認知行動療法も効果的で、この療法を取り入れた患者さんの約65%が生活の質の向上を感じているそうです。
3つ目の作業療法では、作業療法士によるリハビリテーションになります。日常生活のリズムを整え、社会生活への自信を持てるようになり、日常生活動作の改善に繋げていきます。
家族や周囲によるメンタルケア
本人の努力も大切ですが、家族や周囲方のサポートも重要になります。実は、家族による適切なサポートがある場合、再発率が約40%低下するというデータもあります。ポイントは、「見守りつつ、必要以上に干渉しない」というバランスをもつことです。
具体的には「本人のペースを尊重する」「批判的な言葉を避ける」「小さな変化や努力を認める」といった関わり方が効果的です。また、サポートするだけでなく、家族自身のメンタルケアも重要です。家族会などのサポートグループに参加している家族の約80%が、「心理的負担が軽減した」という調査結果報告もありました。専門家と家族による重層的なサポートがあることで、多くの方が社会復帰への一歩を踏み出すことができています。次は、具体的な回復へのアプローチ方法についてです。
統合失調症からの回復に向けた取り組み
回復への1歩は、「生活リズムを整える」ことです。規則正しい生活リズムは、お薬による治療効果も高めてくれるんです。とは言っても、実際のところ「どうやって日常生活を整えていけばいいんだろう…」と疑問を持たれた方もいらっしゃるかと思います。これは、多くの患者さんやご家族が抱える悩みです。一緒にポイントを確認していきましょう。
こころと体の健康を支える生活リズムづくり
まず大切なのは、心地よい睡眠リズムを作ることです。朝は太陽の光を浴びることから始めましょう。カーテンを開けて、自然な目覚めを促すことで、体内時計が整っていきます。可能であれば、毎日同じ時間に起きることを意識するとより効果的です。夜は、寝る1時間前からスマートフォンやパソコンの利用を控えめにすることをおすすめします。「布団に入ったけど中々眠れない!」という日があっても焦る必要はありません。布団の中でゆっくり休むことも、立派な休息になるんですよ。
次に意識したいのが、食事の時間です。特に朝ごはんは大切です。最初は食べる量が少なくても構いません。まずは、毎日同じ時間に何か口に入れる習慣をつけていきましょう。好きな食べ物を取り入れながら、少しずつ栄養バランスも意識していけると理想的です。可能であれば、家族や友人と一緒に食事をする機会を作るのも良いですね。
最後は、心と体のリフレッシュです。天気の良い日は、短時間でも外に出て散歩をしてみましょう。自然の空気を吸うことで、気分転換になりますにもつながり、軽い運動をすることで脳内の神経伝達物質セロトニンやエンドルフィンの分泌を促進し、気分を向上させる働きがあります。他にも、音楽を聴いたり、好きな本を読んだり、塗り絵をしたり。自分なりのリラックス方法を見つけていくことが大切です。疲れを感じたら、我慢せずに休憩を取ることも、立派な自己ケアの一つです。
可能であれば、こうした日々の過ごし方を記録していくと、より効果的です。専用の手帳やノートを用意して、その日の体調や気分の変化、楽しかったこと、心地よかったことなどを、簡単に書き留めていきましょう。服薬状況も一緒に記録しておくと、主治医やカウンセラーとの相談の際に、とても役立ちます。困ったことがあれば、それも正直に書いておきましょう。
社会参加への一歩!支援サービスの活用
社会参加は、決してあせる必要はありません。まずは自分の心地よいペースを見つけることから始めましょう。その第一歩として、デイケアやショートケアの利用をおすすめします。
ここでは、同じような経験を持つ仲間と出会えることが大きな特徴です。みんなで一緒に活動する中で、自然とコミュニケーションの機会が生まれます。無理なく新しいことにチャレンジできる環境が整っていて、困ったときには専門スタッフに気軽に相談できるのも心強いポイントです。
さらに準備が整ってきたら、就労支援プログラムの利用も検討してみましょう。最近は「リワークプログラム」や「就労継続支援」といった制度が充実してきています。ここでは、自分に合った働き方を探すところから始められます。職場でのコミュニケーションの練習や、ストレスへの対処法、働く時間の調整方法なども、実践的に学ぶことができます。
回復に向けた取り組みをしていく中で、大切なのは自分のペースを大切にすること。「今日は調子が悪いな」と感じたら、無理せず休むことも回復の大切なプロセスです。焦らずに、自分のペースで取り組んでいきましょう。
【まとめ】統合失調症のメンタルケアを知る 〜症状の理解から支援方法・回復までのステップ〜
統合失調症患者さんへのメンタル支援において最も重要なのは、一人ひとりの状況に合わせた個別的なアプローチです。専門家による適切な治療と、家族や周囲の理解・支援が組み合わさることで、より効果的な回復への道が開かれます。
また、支援する側も定期的に自身のメンタルケアを行い、長期的な視点で支援を続けることが大切です。統合失調症は決して珍しい病気ではなく、適切な支援があれば、多くの方が充実した生活を送ることができます。一人で抱え込まず、様々な支援を活用しながら小さな一歩を、家族や支援者と一緒に喜びながら進んでいきましょう。前に進むスピードは、人それぞれ違って当たり前です。ゆっくりと、でも着実に回復へ向けて取り組んでいきましょう。