【保護者向け】いじめによる子どものうつ病・不安障害の予防と支援

最近、お子さんの様子の中で次のようなことはありませんか?

「元気がない」「学校に行きたがらない」「夜眠れないと言う」・・・

これらは、いじめによる心の健康問題のサインかもしれません。文部科学省の調査によると、2022年度のいじめの認知件数は60万件を超え、その影響による不安やうつ症状を訴える子どもが増加しています。特に心配なのは、つらい気持ちを誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまうケースです。

今回はお子さんの心の健康を守るために、保護者としてできることを一緒に確認していきましょう。早期発見のポイントから、専門家への相談方法、家庭でのケアなど、一緒に子どもたちの心の健康を守っていきましょう。

いじめによる精神疾患を防ぐには早期発見カギ

まずは、いじめによって起こりうる心の健康問題について、どうやって早めに気づけるのか、お話ししていきたいと思います。文部科学省の調査によると、2022年度の小中高でのいじめ認知件数は60万件以上で、特に小学校での報告が最も多かったんです。でも実は、報告されていない数はもっと多いかもしれませんね。では、心の健康に影響が出ているときって、どんなサインがあるのでしょうか?

子どもの行動変化に気づくポイントとは

精神疾患や子どものメンタルサインの1つ目が「急な生活習慣の変化」です。

例えば

・夜眠れなくなった

・食欲がなくなった(または急に増えた)

・今まで好きだった趣味をやらなくなった

・部屋に閉じこもりがち

なんてことはありませんか?

これらの変化は、実は心が不安定になっているサインかもしれません。特に注目してほしいのが「睡眠の乱れ」です。夜更かしが増えたり、朝なかなか起きられなくなったりするのは、心の健康状態を映す鏡のようなもの。思春期特有の生活リズムの乱れとは違う、何か心配なことを抱えているかもしれません。

また、趣味や好きなことへの興味が急になくなるのも注意が必要です。「部活もやる気が出ない」「好きなゲームもつまらない」という状態が続くようであれば、心の元気が減っているサインかもしれません。

心の健康メンタルヘルスを脅かす危険信号とは

先ほどは、行動面での変化(生活習慣)からのサインをお伝えしましたが、その他にも「体の変化も注意する」これが2つ目のポイントです。

例えば

・頭痛や腹痛をよく訴える

・理由もなく疲れている

・朝起きられない

・イライラが増えた

これらは心が発しているSOSサインかもしれないんです。心と体って、実はとても密接に繋がっています。ことわざにもありましたが、「病は気から」というように精神的な疲労やストレスは体にも何らかの影響があるんです。「最近、お腹が痛いな」と思って病院で検査しても異常がない…こんな経験がある人もいるかもしれません。強いストレスを感じているときには、私たちの体は様々な形で反応を示します。

わかりやすい例を出すと、「テスト前の緊張で胃が痛くなる」です。ドラマや映画、アニメや漫画などでも描かれるどこかで1度は見たり、聞いたことがある例ではないでしょうか。他には「なんとなく体がだるい」「朝起きても疲れが取れない」という状態が続くのも、心の疲れが体に出ているサインかもしれません。

見逃しやすいSOSサイン

最後の3つ目は「意外と気づきにくいけど、大切なサイン」です。

・SNSの投稿が急に増えた(または減った)

・話し方が投げやりになった

・「どうせ」「しょうがない」といった言葉が増えた

・些細なことで涙ぐむようになった

これらの変化に気づいたとき、どう接すればいいのでしょうか?実は、すぐに「大丈夫?」と聞くのではなく、まずはいつも通りに接することが大切です。信頼関係があってこそ、心の内を打ち明けてくれるものですからね。国立成育医療研究センターの調査によると、悩みを誰かに相談できる子どもは、メンタルヘルスの回復が早いという結果が出ています。だからこそ、「話してくれてありがとう」「一緒に考えていこう」という態度で接することが、とても重要なんです。難しいかもしれんが、「いつもと違う」と感じたら、それを見逃さないことです。特に思春期は心も体も大きく変化する時期でいじめなどに関係なく精神的に不安定になりやすい時期になります。だからこそ、周りの人たちはちょっとした変化にも気づいてあげられるといいですね。

また、本人に任せる範囲となりますが、心配なことがあったら、一人で抱え込まないことです。友達や家族、先生に言えない場合、SNSを利用する子も多いですが、スクールカウンセラーの先生や近くの医療施設に相談してみるのもいいと思います。最近は、LINEでの相談窓口もあって、気軽に相談できるようにもなってきています。

外部リンク
参考:文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」

参考2:文部科学省「学校における子供の心のケア」

参考3:国立成育医療研究センター「よくある子どもの心のQ&A」

 

うつ病・不安障害の予防するメンタルケアの方法

いじめによる心の健康問題のサインについてお話ししました。次は、その予防対策についてです。心の健康問題予防と聞いても難しいイメージがありますよね。実は、風邪予防で家に帰ったら手洗いやうがいをするように、精神疾患など心の健康問題に対する予防は意外と身近なところから始められるんです。

例えば「運動」も身近な予防の1つです。日本児童青年精神医学会の調査によると、適度な運動や規則正しい生活習慣を続けている子どもは、ストレスへの耐性が高いという結果も出ています。このように身近でできる予防法を紹介したいと思います。

メンタルヘルス(心の健康)を守るための3つのステップ

まず1つ目は「自分(子ども)の気持ちを大切にすること」です。

「つらいな」って感じていたら、それを認めてあげることから始めましょう。「がんばれ!」という応援や支えたいと思ってかけた言葉が逆効果になることもあります。親や周りの価値観から、気持ちを判断するのではなく、相手の気持ちを認めて、想いに寄り添うようにしましょう。

 

2つ目は「心と体のリフレッシュ」です。好きな音楽を聴いたり、軽い運動をしたり、深呼吸をしたりと自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。ただし、急激な変化は逆効果となります。たとえば、ウォーキングをする習慣がないのに、毎日30分やる!といっても逆に負担になったり、2、3日で終わってしまったり。そうならないようまずは5分程度の散歩から始めるなど、無理のない範囲で長く続けることがポイントになります。その中で徐々に時間や距離、負荷などを変化させるようにしましょう。

 

そして最後3つ目は、「誰かと話すこと」です。実はこれがいちばん重要かもしれません。友だち、家族、先生…誰でもいいんです。これは、話すことで気持ちが整理されたり、新しい考え方が見つかったりすることがあるからです。一人じゃないって感じられるだけでも、心は少し楽になれるものです。内閣府の調査によると、悩みを抱える中高生の約4人に1人が『誰にも相談していない』という結果が出ています。心の問題は、風邪や怪我など身体的なものよりも、言いにくいし、病院などの専門機関にも行きにくい部分がまだまだあります。

とはいっても、こころの問題も立派な病気であり、つらい気持ちを抱え込まないでいいんです。今は少しずつオープンな問題となってきて、様々な相談窓口やLINEやチャットでも気軽に相談できる所も増えてきました。今は大丈夫な場合でも、今後や誰かを支えられるようにお近くの施設などを知っておく事も大切です。

外部リンク
参考:国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「ストレスとセルフケア」

参考2:内閣府「令和4年度 子供・若者白書」

 

専門家による支援の活用方法

心の健康を守るための予防対策についてお話ししました。でも人によっては、「予防だけじゃ足りないかも…」って感じることもありますよね。その時には、専門家の力を借りましょう! 専門家による支援をどう活用するか、具体的にご紹介します。

心のケアと専門家の役割

「カウンセリングって、どんな人が行くの?」「心理療法って難しそう…」なんて思っている人も多いかもしれません。実は、心の専門家による支援は特別なことじゃないんです。風邪をひいたら病院に行くように、心が疲れたときは専門家に相談するのが自然なこと。そう考えてみてはどうでしょうか。メンタルケアを受けた中高生の約7割が「話を聴いてもらえて楽になった」と回答したという調査結果もありました。専門家との対話を通じて、自分の気持ちを整理したり、新しい対処法を見つけたりすることができるんですよ。

でも、「どこに相談したらいいの?」って思いますよね。実は、身近なところから始められます。

1つ目は、「スクールカウンセラー」です。

ほとんどの学校に配置されていて、無料で相談できます。友だち関係の悩みから、家族のことまで、どんな相談にも応じてくれます。

2つ目は「地域の相談センター」です。

各市区町村に設置されている相談窓口です。心理療法の専門家が常駐していて、継続的なケアを受けることができます。

3つ目は「医療機関での心理カウンセリング」です。

心療内科やメンタルクリニックでは、医師との連携のもと、より専門的なメンタルケアを受けることができます。特に最近は、オンラインでのカウンセリングも増えてきました。厚生労働省の発表によると、若い世代の約6割がオンライン相談に「抵抗感が少ない」と答えているそうです。

以上の3つになりますが、大切なのは「相談することは恥ずかしいことじゃない」ということです。むしろ、自分の心と向き合おうとする勇気ある一歩なんです。専門家は、あなたの気持ちに寄り添いながら、一緒に解決の道を探してくれる味方です。

外部リンク
参考:文部科学省「スクールカウンセラーについて」

参考2:国立成育医療研究センター「相談窓口」

参考3:厚生労働省 「こころの耳 相談窓口案内」

 

保護者ができる具体的な支援

前回は専門家による支援について説明しました。でも、実は毎日の生活の中で、保護者ができるサポートがたくさんあるんです。最後は、家庭でできる具体的な支援方法について紹介したいと思います。

家庭での支援の大切さ

ある研究所の調査によると、「家族との良好な関係」がある子どもは、ストレス状況からの回復が早いという結果がありました。子どもが過ごす時間が多い場所であり、家族の支えがとても大きな力になるんです。

具体的には、まず「安全な居場所づくり」です。学校でつらい思いをしている子どもにとって、家が「ホッとできる場所」であることはとても重要です。「話したくないときは話さなくていい」「そのままのあなたでいい」というメッセージを、言葉だけでなく態度で示していくことも大切です。

次に意識したいのが「積極的な傾聴」。子どもが話し始めたときは、すぐにアドバイスするのではなく、まずはじっくり聴くことから始めましょう。「解決策を提示される前に、十分に気持ちを聴いてもらえた」と感じた子どもの方が、前向きに問題に取り組めるようになるそうです。

また、学校との連携も重要なポイントです。担任の先生やスクールカウンセラーと定期的に情報交換することで、学校と家庭の両方で一貫したサポートができます。ただし、この際も必ず子どもの気持ちを第一に考え、どこまで情報を共有するか、子どもと相談しながら進めることが大切です。

そして忘れてはいけないのが「小さな変化を認めること」です。「今日は少し笑顔が見られたね」「学校に行こうと頑張ったね」など、小さな前進にも気づき、認めてあげることで、子どもは少しずつ自信を取り戻していけます。「批判や否定を避け、受容的な態度を保つこと」「子どもペースの回復を認めること」「家族全体でサポート体制を作ること」などを意識しながら、焦らず、じっくりと子どもに寄りそっていきましょう。

また、最後に大事なポイントがあります。それは、子どものサポートも重要ですが支える側の保護者自身のケアも大切だということも忘れないようにしましょう。子どもだけでなく、保護者自身も一人で抱え込まず、必要に応じて専門家に相談したり、保護者同士で情報交換したりするようにしましょう。

 

【まとめ】いじめによる子どものうつ病・不安障害の予防と支援

長くなりましたが、いじめによる心の健康問題への対応について紹介してきました。厚生労働省の調査では、複数の支援環境がある子どもの方が、心の回復が早いという結果も出ています。一人で悩まず、周りの力を借りながら、じっくりと子どもの回復を支えていくことが大切です。

子どものつらい気持ちに気づき、適切なケアを行うことで、必ず回復への道は開けます。その際、家族全体での取り組みも重要です。「誰かが問題を抱えているとき、それは家族みんなで乗り越えていこう」という姿勢が、子どもに大きな安心感を与えます。

また、保護者の皆さんも完璧な対応は必要ありません。時には迷い、悩むことも当然です。学校だけでなく、地域の子育て支援センターや児童館、スポーツクラブなど、様々な場所や人とのつながりも大切です。「家族だけで」「ひとりでどうにかしなきゃ」と抱え込まず、周りや専門家の力を借りながら解決していくようにしましょう。