高齢者のうつ病・自殺予防を考える メンタルヘルスケアと生きがい作りのポイント

高齢化社会がニュースでも取り上げられていますが、合わせて高齢者のメンタルヘルスについて考えることが増えています。「年だからしょうがない」と片付けられがちな心の問題。

でも、本当にそうなのでしょうか? 今、高齢者の7人に1人が心の健康に不安を抱えているというデータもあります。今回は、高齢者の方々の心の健康について、メンタルケアの方法から生きがいづくりや認知症予防など、若い世代にもできるサポート方法をご紹介します。高齢者の方々の笑顔のために、私たちができることを一緒に考えていきましょう。

高齢者のメンタルヘルスの現状と課題

みなさん、最近おじいちゃんおばあちゃんとゆっくり話をする機会はありましたか?実は、日本の65歳以上の高齢者の約15%が「こころの健康」に不安を抱えているんです。これって、7人に1人という計算になりますよね。

高齢者のメンタルヘルスの問題は、実は私たちが考えている以上に深刻です。WHOの最新データによると、高齢者のうつ病は若い世代の約2倍も多く発症しているそうです。でも、「年だから仕方ない」って見過ごされがちなんです。そこでちょっと考えてみてほしいことがあります。これって本当に年齢によるものだから仕方ないことなのでしょうか?

高齢者の心の健康を脅かす主な要因として、以下のようなものが挙げられます。

  • 退職による社会との接点の減少
  • 体力や健康の衰え
  • 家族や友人との死別
  • 経済的な不安

特にここ数年は、コロナ禍の影響で「人と会えない」「外出が減った」という状況が続き、多くの高齢者が孤立を経験しました。厚生労働省の調査では、この期間中に65歳以上の方の約40%が「気分が落ち込むようになった」と回答しています。また、見過ごされがちな重要なポイントとして、高齢者特有の「SOSの出し方」があります。若い世代は「つらい」「悲しい」といった感情を比較的ストレートに表現する傾向がありますが、高齢者の場合は「身体の調子が悪い」「眠れない」「食欲がない」といった身体症状として表れることが多いそうです。ここで注目したいのが、これらの症状の多くは「うつ病」のサインである可能性が高いということです。特に高齢者の場合、メンタルヘルスの問題が重症化すると、最悪の場合には自殺リスクにつながる可能性もあり、高齢者の自殺率は他の年齢層と比べて高い傾向にあります。

でも、これらの問題は適切なケアと支援があれば必ず改善の道があるんです。大切なのは、高齢者の心の叫びに早めに気づき、適切なサポートにつなげることなんです。そのためには、家族や地域社会全体での理解と支援が必要不可欠です。具体的にどんなメンタルケアの方法があるのか?実践的なアプローチ法について見ていきましょう。

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参考:WHO(世界保健機関) “Mental health of older adults”

参考2:警察庁「令和4年中における自殺の状況」

 

メンタルケアの具体的なアプローチ法

高齢者のメンタルヘルスの問題は決して「年だから仕方ない」では済まされない、私たちみんなで考えていくべき大切な課題なんです。それでは、具体的にどんなケアの方法があるのか、見ていきましょう。

最近注目を集めているのが「認知行動療法」というアプローチです。ちょっと難しそうに聞こえるかもしれませんが、要は「考え方のクセ」を少しずつ変えていく方法なんです。例えば、「もう年だから何をやっても無理」という考えを、「新しいことに挑戦する良い機会かもしれない」という風に捉え直していきます。この手法はうつ病の治療に効果的であることも科学的に実証されているんです。

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参考:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター「そもそも認知行動療法(CBT)ってなに?」

 

他にも家族ができる日常的なメンタルサポートとして、以下のような方法があります。

1つ目「傾聴」の実践

  • 否定せずに話を聴くこと
  • 相手の気持ちに共感する言葉を返すこと
  • 解決を急がず、まずは受け止めること

 

2つ目「生活リズムのサポート」

  • 規則正しい食事時間の確保する
  • 適度な運動の声かけやサポート
  • 十分な睡眠時間の確保する

 

などがあります。また、家族ができる特に重要なサポートは、かかりつけ医との連携です。内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の高齢者の約8割が「かかりつけ医」を持っており、健康面での最も身近な相談相手となっています。

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参考:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

 

また、最近では地域包括支援センターの活用も推奨されています。このセンターでは、保健師や社会福祉士などの専門職が、介護予防や権利擁護、総合相談などのサービスを無料で提供しています。お住まいの地域の地域包括支援センターは、市区町村の介護保険課などに問い合わせると確認できます。

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参考:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

 

ここで覚えておいてほしい「SOS」のサインとその対応方法をまとめてみました。

気づきのポイントは

  • 不眠の症状が2週間以上続く
  • 食欲の急激な変化(増えたり、減ったり)
  • 趣味への興味がなくなる
  • 身だしなみへの関心低下

などがあります。もし、そうした変化に気付いたら

  • まずは優しく声をかける
  • ゆっくりと話を聴く
  • 必要に応じて専門家に相談することを提案
  • 一緒に医療機関や支援センターに行く

といった対応をしてあげましょう。また、こういった支援は決して特別なことではありません。例えば、LINEやメールで「今日も元気?」って送るだけでも立派なメンタルケアになるんです。デジタルツールを活用したサポートって、実はすごく効果的なんですよ。実際に合わなくてもテレビ電話などができるアイテムも増えてきているので活用してみるのもいいかもしれません。

次は、高齢者の方々の生きがいづくりについて考えてみたいと思います。メンタルケアと生きがいづくり、この2つは実は切っても切れない関係にあるんです。

 

生きがい作りで実践する自殺予防

今回は、高齢者の方々の生きがい作りについてです。「生きがい」を持つことも、心の健康を保つ上でとても大切なんです。具体的な方法を見ていきましょう。

内閣府の調査によると、「生きがいを感じている」と答えた高齢者は、そうでない方に比べて心の健康度が明らかに高いことが分かっています。特に注目したいのは、人とのつながりを持っている高齢者ほど、生きがいを感じやすい傾向があるということです。それでは、具体的にどんな活動が生きがいづくりにつながるのでしょうか?

まず注目したいのが、趣味活動を通じた社会とのつながりです。実は、趣味には「楽しむ」という目的以外にも、大切な意味があるんです。地域のカルチャーセンターやコミュニティセンターでの活動は、同じ興味を持つ仲間との出会いの場となります。具体的な活動としては

  • 定期的な教室やサークル活動への参加
  • 季節の行事やイベントへの参加
  • オンラインでの趣味サークル(最近は Zoom を使った教室もあります)

などがあります。最近では、コロナ禍の影響もあって、オンラインでの活動が増えています。「パソコンは苦手…」という声も聞こえてきそうですが、実は、これが新しい可能性を広げているんです。天候に関係なく参加できる、遠方の仲間とつながれる、移動の負担がないなど、むしろ高齢者の方にとって、たくさんのメリットがあることが分かってきています。

次に効果的なのが、自分の経験や知識を活かした活動です。

  • 料理が得意な方が地域の方に郷土料理を教える
  • 園芸の知識を活かして地域の緑化活動をリードする
  • 手芸や工作を通じて地域の子どもたちと交流する

などがあります。「教える側」になることで、より大きな充実感が得られるんです。「誰かの役に立っている」という実感は、何物にも代えがたい生きがいになります。また、地域活動への参加も重要な選択肢です。地域社会との接点を広げる活動として

  • 子ども食堂でのサポート
  • 図書館での読み聞かせをする
  • 地域の清掃活動や見守り活動に参加する
  • 防災訓練への参加する

などがあります。これらの活動には共通する重要なポイントがあります。それは「継続的な人との関わり」です。一回きりのイベントよりも、定期的に誰かと会える機会があることが大切なんです。例えば、毎週水曜日は地域の清掃活動、月に一度は子ども食堂でのボランティア、といった具合に、カレンダーに印をつけられる予定があることで、生活に張りが出てきます。

また、最近では自分の経験や知識を活かして、地域や社会に新しい価値を生み出している高齢者の方達も増えてきています。具体的な例として「空き家を活用した子ども食堂の運営」「伝統工芸を若い世代に伝える教室の開催」「地域の歴史を活かしたガイドツアーの企画」などです。大切なのは、無理のない範囲で、自分に合った活動を見つけること。「これをしなければならない」という義務感ではなく、「やってみたい!」という気持ちで始めることが、継続の秘訣だそうです。

外部リンク
参考:厚生労働省 「地域共生社会」の実現に向けて

 

認知症予防とメンタルヘルスケアの両立

ここまでに、紹介してきた生きがいづくりの活動には、実は認知症予防の効果もあるんです。今回は、楽しみながら続けられる認知症予防と、メンタルヘルスケアを組み合わせた方法についてご紹介します。

認知症予防というと、難しい計算ドリルや漢字の書き取りを想像する人も多いかもしれません。でも、実は日常生活の中で気軽に始められる効果的な予防法がたくさんあるんです。大切なのは、「楽しみながら」継続できること。無理なく続けられる方法を見つけていきましょう。特に注目したいのが、運動と脳トレの組み合わせです。

例えば・・

  • ウォーキングしながら好きな音楽を聴く
  • 友人との会話を楽しみながらラジオ体操
  • 簡単なダンスで体を動かす
  • 歌を歌いながらのストレッチする

などです。これらの活動は、体を動かすことで脳への血流が増え、さらに音楽や会話を楽しむことで脳が活性化されます。「一石二鳥」どころか、メンタルヘルスケアの効果も加わって「一石三鳥」かもしれません。加えて、食事管理も認知症予防とメンタルヘルスの両方に効果があります。魚やナッツ類に含まれるオメガ3脂肪酸を摂取することや発酵食品で腸内環境を整えるなどがあります。

ここでも大切なのが「楽しく食べる」という視点です。

  • 料理教室で新しいレシピに挑戦
  • 野菜作りから始める食育活動
  • 仲間と一緒の食事会の開催

などがあります。これまでに試したけど続かないと言う人はちょっと工夫してみると良いかもしれません。

そして、継続的な予防活動のコツは「できること」から始めることです。最初から完璧を目指す必要はありませんので、「今日は3分でもいいからストレッチをする」「週1回でも友人とお散歩する」「夕食で一品だけ意識して野菜を増やす」など無理のない範囲で少しずつ始めてみましょう!

また、デジタル機器を活用した新しい取り組みも増えています。スマートフォンやタブレットを使った脳トレゲームは、楽しみながら認知機能を鍛えることができます。最初は難しく感じるかもしれませんが、孫と一緒に始めてみるのも良いアイデアですよ。

何度も伝えてきましたが、大切なのは、これらの活動を「義務」としてではなく、「楽しみ」として捉えることです。「病は気から」というように心と体の健康は、実は深くつながっています。「効果を高めるため」「長く続けるため」にも楽しむための何かをひとつ加えられると良いですね!

外部リンク
参考:公益社団法人 日本理学療法士協会「運動」が「認知症予防」に効果的なこと

 

【まとめ】高齢者のうつ病・自殺予防を考える メンタルヘルスケアと生きがい作りのポイント

今回は高齢者のメンタルヘルスケアについて、現状把握から具体的な対策まで見てきました。大切なのは、「年だから仕方ない」と諦めないこと。メンタルケア、生きがいづくり、そして認知症予防は、実は密接につながっているんです。かかりつけ医や地域包括支援センターなど、専門家のサポートを受けながら、ご家族や地域での支え合いを大切にしていきましょう。高齢者の方々の笑顔は、きっと周りの私たちの励みにもなります。一人ひとりができることから始めてみませんか?