精神疾患の1つボーダーラインパーソナリティー症とメンタルケアとは?

年々増加傾向にある精神疾患。今回はその中の1つ「ボーダーラインパーソナリティ症」について、どのような症状があるのか、どんな事をきっかけとして起こり得るのか、治療法などを紹介していきます。

ボーダーラインパーソナリティ症(BDP)とは?

ボーダーラインパーソナリティー症とは英名でBorderline Personality Disorder(略称BDP)とも呼ばれ、他にも境界性パーソナリティ障害、境界性人格障害と呼ばれている精神疾患の1つです。推定有病率の中央値は1.6%だと言われています。

人に見捨てられたりすることに対して強く恐れを抱き、感情の不安定さや、対人関係における問題、時には衝動的な行動に出たりすることもあります。

思春期から成人期にかけて症状が現れることが多いとされており、急激な感情の起伏によって普通に楽しく話していたら、ふとしたきっかけでまるで別人のように憎しみをぶつけてくるほど極端な差が出ることもあります。

そのせいで他者を振り回してしまうこともあり、対人関係に大きな影響を与えてしまうことも多くあります。

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参考:MSDマニュアル ボーダーラインパーソナリティ症(BDP)

 

ボーダーラインパーソナリティ症の症状とは?

ボーダーラインパーソナリティ症では以下のような症状が一般的に多く見られます。

見捨てられることへの強い不安や恐怖

これは後の項目でも紹介をしますが、幼少期に虐待やネグレクト(無視や放置)をされた経験がボーダーラインパーソナリティ症の原因となっていることが多くあります。

その経験があることで、成長をした後でも心の奥底に「自分が見捨てられることへの不安」が常に残ってしまっている状態になってしまいます。そのため、親しい人に見捨てられた・見捨てられるかもしれないという状況を強く嫌う傾向にあります。

周囲の人が決して見捨てるという気はなくとも、些細なことがきっかけとして本人が不安や恐怖を感じることでパニックになったり、感情が爆発することがあります。

感情の不安定さ

ボーダーラインパーソナリティ症の方は感情のコントロールを非常に苦手としており、些細なことで急激に感情の変化が起こり得ます。喜んでいたと思ったら急に深く悲しんだり、怒っていたと思ったら急に楽しそうにしたりと、感情の振れ幅が大きく、日常生活や社会生活に大きな影響を与えることが少なくありません。

対人関係における問題

ボーダーラインパーソナリティ症の方は人間関係において極端な受け取り方をする場合が多いです。愛されてると感じていても、少しでも相手が冷たくした、拒絶したと感じることがあります。

また、1,2回あった程度の相手を極端に理想化することがあります。ですが、自分の理想を満たしてくれないと分かった途端に、今度は相手を悪く捉えて怒ったり貶したりすることがあります。

自己像の不安定

ボーダーラインパーソナリティ症の方は自分の評価が極端になることが多いです。自分が悪い人間だと考えて自己評価が下がることがあれば、自分は良い人間だと考えて過剰に高くなることもあります。

また、自分の意見や趣味、目標としていた事など自分の事以外にも、職業や友人などが今まで付き合っていた人とまったく違うタイプの方に突如変わることがあります。

衝動的な行動、自傷行為や自殺による脅迫

衝動的に過剰な買い物や浪費、ギャンブル、危険な運転などの衝動的な行動を取ることがあります。他にもアルコールや薬物なども好むことがあります。

また、自分が重要視している相手から見捨てられたり、拒絶されたと感じることで自傷行為や自殺をほのめかしたり、相手を脅すような行為を繰り返したりすることもあります。

外部リンク
参考:MSDマニュアル 
ボーダーラインパーソナリティ症(BDP)

参考2:境界性人格障害の特異性について

 

ボーダーラインパーソナリティ症の原因やきっかけとは?

原因としてはいくつかの物が挙げられます。まず精神疾患の大半に共通して挙げられる遺伝的要因。これは、親や親族などにボーダーラインパーソナリティ症や他の精神疾患の方がいると、精神的になりやすい傾向があるという可能性です。

次に、大きな原因として挙げられる物が環境的要因です。先程の項目でも紹介しましたが、幼少期に虐待やネグレクト(無視や放置)を経験したことが、ボーダーラインパーソナリティ症の発症に繋がっていることがあります。

もちろんこれらを経験したからといって必ずしもボーダーラインパーソナリティ症になるとは限りません。また、近しい関係の方との死別などの強いストレスがかかる出来事が起こった後に、ストレスが非常に強く発症のきっかけとなることもあります。

この場合は心的外傷後ストレス障害(PTSD)になる可能性もあり、症状に注意しておくことが必要です。

 

ボーダーラインパーソナリティ症の治療法は?

ボーダーラインパーソナリティ症の治療で最も効果的だとされているのは、認知行動療法を始めとした心理療法です。特に「弁証法的行動療法(DBT)」がよく使用されるようです。

このDBTでは、自分では制御できない感情を抱えて苦しんでいる人を対象とした心理療法です。その他にもPTSDやうつ病などにも用いられることがあります。また、弁証法的行動療法以外にもメンタライゼーション療法、スキーマ療法なども効果的で用いられる療法となります。

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参考:境界性パーソナリティ障害とその他関連疾患

 

予防に必須なメンタルヘルスを守るために

ボーダーラインパーソナリティ症は、いくつかの原因は判明していますが、人によって発症する原因は異なります。過去に虐待を受けた方がいれば、受けたことのない方もいますし、家庭環境や生活環境など複雑な要因があります。

そのため、ボーダーラインパーソナリティ症に限らず、精神疾患にならないために本人に出来る予防の方法としてメンタルヘルスの不調を防ぐことが大切です。

まずは生活習慣を見直しましょう。このブログでは何度も挙げているのですが、それほど生活習慣は大切なものです。身体的な健康を守ることで、メンタルヘルスを守ることにも繋がります。

不規則な睡眠リズムや不健康な食生活、運動不足に気を付けましょう。リモートワークが増えた影響で、つい崩れがちであったり、学生の場合は長期休暇で生活リズムが崩れやすいことが多くあります。

次に、ストレスとの上手な付き合い方を見つけましょう。自分がどのような環境でストレスを感じやすいのか、どのようなことでストレスを発散できるのか、自分の心がストレスでダメージを受けている時のサインなどはご存知ですか?

意外と自分のストレス耐性や、心からのサインなどを知らない方は多いです。身体的不調に現れる方がいれば、精神的不調に現れる方もいますので、気を付けましょう。

また、ストレスの発散方法も同時に確立していきましょう。なるべく時間や手間がかからずに気軽に出来るものから探すことをおすすめします。深呼吸やストレッチ、散歩などの軽く身体を動かすものや、好きなことをするなど様々な方法があります。

そして、自分が信頼できて相談できる相手を探しましょう。これは親友や家族、職場の同僚や上司に限らず、心療内科の専門家などでも構いません。相談できる相手がいることで、悩み事などを1人で抱え込んで悪循環に陥るリスクを減らすことができます。

こちらの記事では、精神疾患になりやすい人の紹介をしていますので、よろしければご覧ください。

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【まとめ】精神疾患の1つボーダーラインパーソナリティー症とメンタルケアとは?

今回はボーダーラインパーソナリティー症について紹介をしてきました。

他者を振り回しやすいこの精神疾患ですが、それらの行動は他者に対して試しで行っていることが多くあります。そのため、安易に当人を変えようとしたり、否定するのではなく、受け入れていくことで、現状の改善の1歩になる可能性があります。

ですが、周囲の方が1人で抱え込んでしまうと、それは周囲の方の大きな負担となることがあります。専門家に相談することは本人も周囲の人も救うことができますので、医療機関や地域の相談できる機関へ相談してみましょう。そういった機関を頼ることは決して恥ずかしいことではありません。