皆さんは「強迫性障害」というものは聞いたことはありますか?今回は、強迫性障害と強迫症について、そして発達障害との関連性についてとメンタルケアについても紹介していきたいと思います。
強迫性障害と強迫症とは
まず始めに、強迫性障害と脅迫症について知っている方もそうでない方もいらっしゃると思いますので、症状や特徴から紹介をしていきたいと思います。
強迫性障害の主な症状と特徴
強迫性障害(OCD:Obsessive-Compulsive Disorder)は、日常生活に支障が出るほど強い精神疾患の1つです。不安や緊張から特定の考えや行動を繰り返してしまう精神疾患の一つです。例えば、「手を洗わないと不安で仕方がない」「ドアの施錠を何度も確認してしまう」といった症状が特徴的です。
日本では人口の2~3%の方が強迫性障害を抱えているとされています。そのため、決して珍しい病気ではないんです。症状は人それぞれですが、強迫性障害の主な特徴として次のようなものがあります
- 不合理だと分かっていても頭から離れない考え
- その考えによって強い不安や緊張が生じる
- 不安を和らげるために特定の行動を繰り返す
強迫症の定義と症状
強迫性障害と合わせて、強迫症という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?強迫症では、以下のような症状が見られます。
▶1つ目:強迫観念(オブセッション)
- 繰り返し浮かぶ不快な考えや衝動
- 汚染への不安や恐れ
- 特定の数字や配置へのこだわり
▶2つ目:強迫行為(コンパルジョン)
- 過度な手洗いや確認行為
- 特定の順序や回数へのこだわり
- 物を整理・整頓する行為の繰り返し
これらに該当する症状があるのが特徴です。初期の段階では、これらの症状が軽度であることも多く、日常生活への影響も比較的小さいです。しかし、症状が進行すると、日常生活に支障が出始めることがあります。
強迫性障害と強迫症の違いと日常生活への影響
ここまで、強迫性障害と脅迫症について紹介をしましたが、強迫性障害と強迫症は同じものを指します。医療現場では「強迫性障害」という診断名が使用され、一般的な会話や情報提供の場面では「強迫症」という言葉が多く使われています。
また、日常生活への影響としては、
- 確認行為に時間がかかり、遅刻してしまう
- 手洗いが過度になり、皮膚がカサカサになる
- 物の整理に時間がかかり、仕事や家事が進まない
このようなものが挙げられます。ただし、このような症状があっても、適切な対処法を知ることで、症状をコントロールすることは可能です。早めに気づいて対応することで、より効果的な改善が期待できます。
また、「些細な確認習慣が増える」、「決まったルーティンにこだわる」、「特定の行動を繰り返さないと落ち着かない」などが初期症状として多く見られます。そのため、これらの症状に気づいたら、早めの対応が効果的です。一人で抱え込まず、専門家に相談するようにしましょう。
外部リンク
参考:国立精神・神経医療研究センター 強迫性障害(OCD)について
発達障害について知ろう
すでにご存知の方も多いかと思いますが、まずは簡単ではありますが発達障害について紹介します。
発達障害ってなんだろう
発達障害とは生まれつきの脳機能の特性や障害です。外見から分かり辛いことがあり、当事者や保護者が周囲からの理解を得られず苦しむケースが多くあります。みなさんの周りにも、実は気づかないだけで発達障害の特性を持つ方がいるかもしれません。発達障害には主に以下のようなタイプがあります。
- 自閉スペクトラム症(ASD):対人関係やコミュニケーションの特徴、興味の限局など
- 注意欠如・多動症(ADHD):注意力の持続が難しい、落ち着きにくいなど
- 学習障害(LD):読み書きや計算の習得に時間がかかるなど
大切なのは、これらを「個性」の一つとして捉えることです。誰もが得意・不得意を持っているように、発達障害も特性の一つとして理解することが重要です。
発達障害のよくある症状や特徴について
達障害の特徴は人によって本当に様々で、一人ひとり異なる特性を持っています。ここでは、比較的よく見られる特徴を「感覚」「行動」「コミュニケーション」に分けてご紹介していきますね。
まず、感覚の特性についてです。発達障害のある方の中には、日常的な音や光、触感を通常より強く感じる「感覚過敏」という特性を持つ方がいます。例えば、蛍光灯のちらつきが気になって集中できなかったり、食べ物の特定の触感が苦手で食事に時間がかかったりすることがあります。これは決して「わがまま」ではなく、その方の感覚特性なのです。
次に、行動面についてです。「変化」や「予定外のこと」への対応に難しさを感じる方が多くいらっしゃいます。いつもと違う道を通ることや急な予定変更に強い不安を感じることもあります。一方で、特定の分野について深い知識を持っていることも多く、これは職場での専門的な作業において大きな強みとなることもあります。
最後に、コミュニケーションの特性についてです。空気を読むことや視線を合わせることが苦手な方、言葉を字義通りにしか理解できない方もいます。ただし、これらの特性も、正確な文書作成など、場面によっては強みとして活かせることがあります。
このように、発達障害の特性は環境や状況によって困難にも強みにもなり得ます。その人の特性を理解し、適切なサポートや環境調整を行うことがポイントになってきます。
強迫性障害と発達障害の関連性と共通点
ここまで強迫性障害と発達障害について紹介をしてきました。強迫性障害と発達障害には、それぞれ似ている特徴がありますが、強迫性障害は
- 不安や恐れから行動を繰り返す
- 「やらなければ」という強迫感がある
- 症状に対して苦痛を感じる
- 行動を制御したいという願望がある
といった特徴があり、発達障害の場合には
- 興味や関心から行動が生まれる
- 決まった方法が好き
- 行動すること自体に楽しみを感じることも
- 必ずしも苦痛とは感じていない
といった特徴があるので、似てはいますが別の障害となります。ただし、これらの特徴は明確に分かれるものではなく、両方の特性を持っている場合もあります。そのため、一人ひとりの特性を理解し、適切なサポート方法を見つけていくことが大切になってきます。
例えば、特定の行動へのこだわりや、決まった順序を守りたい気持ち、変化への不安といった部分です。しかし、その行動の背景には大きな違いがあることを理解しておく必要があります。
強迫性障害の場合、不安や恐れから特定の行動を繰り返す傾向があります。「やらなければ」という強い強迫感や不安感が行動の原動力となっています。一方、発達障害では、物事への興味や関心、あるいは感覚の特性から特定の行動が生まれることが多いのです。
また、両方の特性を持っている場合では、発達障害による感覚の過敏さが強迫的な行動のきっかけになることもあれば、強迫性障害の症状が発達障害の特性を強めてしまうこともあります。
そのため、家族や周囲の方々には、この違いを理解した上でのサポートが大切になってきます。ただ、「そうは言ってもどうしたらよいのか?」と悩まれる方がほとんどかと思います。その場合には、家族や周りの方も専門家に相談することをお勧めします。本人のペースを尊重しながら決して無理な改善を求めず、一緒に歩んでいく姿勢がポイントになってきます。
心理療法による心のケア
現在では、「薬物療法」や「心理療法」により回復が期待できます。その中でも今回は薬を使わない「心理療法」について紹介をしたいと思います。
強迫性障害の治療には、様々な心理療法が効果的だとされています。特に認知行動療法は、多くの研究でその効果が確認されている治療法の一つです。この療法では、不安や強迫的な考えに対する捉え方を少しずつ変えていき、それに伴う行動もゆっくりと変化させていくことを目指します。
認知行動療法では、まず自分の考え方のパターンや行動の特徴を理解することから始めます。例えば、手洗いの強迫行為がある場合、まず、手洗いがどのような状況で起こるのか、その時どんな考えや感情が生じるのかを記録します。次に、その考えがどれくらい現実的なのかを検討します。そして、少しずつ手洗いの時間を短くしていく練習や、不安に対する新しい対処法を学んでいきます。少しずつ手を洗う時間を短縮するところから始めて、徐々に適切な時間に近づけていきます。
このように、認知行動療法は段階的に症状の改善を目指していきます。他にも、確認行為が多い方の場合は、「確認した」という事実を携帯のメモに記録する、確認は1回だけと決めて実践する、といった具体的な工夫を取り入れることもあります。また、日常生活でのセルフケアも重要な役割を果たします。規則正しい生活リズムを保ち、適度な運動を取り入れることで、心身の健康を維持することができます。ストレス解消法として趣味(絵や歌、ゲーム、習い事など)を見つけることも大切です。
一方で、発達障害の特性がある場合は、その特性に合わせた対応も必要になってきます。例えば、視覚的な手がかりを使って生活リズムを整えたり、感覚過敏に配慮した環境調整を行ったりすることで、より効果的なケアが可能になります。そのため、専門家への相談は、症状や生活への影響が気になり始めた時点で検討してみましょう。早めの相談により、より効果的な対応が可能になります。特に、日常生活に支障が出始めた時や、不安や苦痛が強くなってきた時は、できるだけ早めに専門家に相談することをお勧めします。
【まとめ】強迫性障害と強迫症の違いとは?発達障害との意外な関連性
「強迫性障害」と「強迫症」は、実は同じ状態を指す言葉でした。医療現場では「強迫性障害」という診断名が使われ、一般的な場面では「強迫症」という呼び方が多く使われています。どちらも、不安や緊張から特定の考えや行動を繰り返してしまう状態を指します。また、発達障害との関連性として一見似ているような特徴があります。
例えば「こだわり行動」や「決まった順序を守りたい気持ち」などです。しかし、強迫性障害では不安や恐れから行動を繰り返すのに対し、発達障害では興味や関心、あるいは感覚の特性から特定の行動が生まれることが多いなど、その行動の背景には大きな違いがあります。さらに、強迫性障害と発達障害の両方の特性を持っている場合もあります。
それぞれの特性を理解し、適切なサポートを組み合わせることで、より良い対処方法を見つけることができます。そして、心配な症状がある場合は、決して一人で抱え込まないことが大切です。専門家による適切なサポートを受けることで、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。個々のペースで、一歩ずつ前に進んでいける方法を見つけていきましょう!