うつ病や統合失調症によって引き起こされるセルフネグレクトとは?

皆さんは「ネグレクト」はご存知でしょうか?育児放棄や育児怠慢とも言われるネグレクトですが、精神疾患にかかると他者に対してではなく自分自身に対して行うべきであるケアを放棄してしまう状態になることがあります。

今回はそんなセルフネグレクトがどのような人に発生しやすいのか、またその対策などを紹介していきたいと思います。

ネグレクトとセルフネグレクトの違いは?

まずはネグレクトの定義から確認していきましょう。ネグレグトの定義としては児童虐待の防止等に関する法律から引用させていただきます。

「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号(身体的虐待)又は次号(心理的虐待)に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること」

児童虐待の防止等に関する法律より引用

このように定義されています。つまり、子どもの成長に必要なケアを行わないことを指してると言えるでしょう。(例:子どもに食事を与えない、家に残して長時間の外出をする、学校に通わせずに家に閉じ込めるなど)

また、児童以外にも高齢者に対して必要な介護サービスの利用を妨げたり、生活環境や身体・精神的状態を悪化させることもネグレクト(高齢者ネグレクトや介護放棄)と呼ばれることもあります。

外部リンク
参考:日本小児科学会 子ども虐待診療の手引き

次にセルフネグレクトについて確認していきましょう。ネグレクトは親が子に、介護者が高齢者になどの他者に対する行為のことを指しました。ですが、セルフネグレクトはセルフとついているように「自己放任」のことを指します。

ただし、ネグレクトのように明確な定義は無く、様々な研究者が定義や概念に対して提唱をしています。共通しているのは「自分が健康や生命、社会生活の維持に必要なことを放任・放棄している」ことです。意図的な放棄はセルフネグレクトに含まれないという意見があれば、含まれるという意見もあるため、この辺りは議論がされている項目です。

セルフネグレクトの具体例

セルフネグレクトに陥った時にあらわれる特徴は多岐にわたりますが、その中の一部をご紹介します。

  • 室内や家の外にごみが散らかった状態で生活している
  • 窓や壁に穴が開いている、傾いているなど危険な状態の家に住み続ける
  • 治療が必要な状態でも、受診や治療を拒否する
  • 長期間入浴や洗顔、爪や髪を切らないなどの身体的なケアをしないなど

あくまでもこれらは一例であり、人によって様々な特徴があらわれることがあります。

外部リンク
参考:社会福祉法人 恩賜財団済生会 気づいたら親が「セルフネグレクト」に? 「孤立死」や「ごみ屋敷」に至る前に対策を

 

セルフネグレクトの原因は精神疾患?

セルフネグレクトはどのようにして現れるのでしょうか。2012年に内閣府が行った「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から」によると、多くの理由として挙げられるのは「認知症や物忘れ精神疾患などの問題(28.3%)」や「親しい人との死別の経験(27.5%)」などが挙げられるようです。ですが、明確に原因が分からないといった解答も少なくありません。このことから、本人が自覚のないままセルフネグレクトに陥り、状態が悪化していくケースも少なくないことが分かります。

認知症や統合失調症、うつ病、依存症といった精神疾患によってセルフ・ネグレクトに繋がるケースはとても多いようです。大事なものを捨ててしまうことへの不安や恐怖が、物を溜め込んで捨てられなくなってしまうことがありますが、人とのコミュニケーションを避けるために物を積んでしまうこともあります。

統合失調症には被害妄想が強く出ることもあり、これによって人間関係のトラブルや悪化が起きてしまい家に引きこもりがちになり、セルフネグレクトへ陥る可能性もあります。

また、親しい人との死別などショックな出来事は、強いストレスにもなりますし生きる意欲の低下へと繋がることがあります。これはセルフネグレクトへ陥る可能性が高く、実際に報告も多数ある出来事です。

外部リンク
参考:内閣府 経済社会総合研究所 セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から

 

セルフネグレクトへの対策はあるの?

では、このセルフネグレクトに陥ってしまった場合はどのような対策が挙げられるのでしょうか?

まずは、セルフネグレクトへ正しく理解をすることが大切です。周囲や他者がその本人に対して支援が必要だと感じても、本人がその必要を感じていなかったり、支援を拒否する可能性があります。これは本人がセルフネグレクトによって起こり得る出来事に対して悩んでいなかったり、支援をうけることに対して抵抗感があることが原因とされています。ただし、生命に危険が及んでいる場合があります。

その場合には医療従事者や福祉従事者などが正しい知識や情報を、その本人に提供しつつ、押し付けたり強制するような言い方を避けつつ促す必要があります。とても難しく、実際に上手く進まないケースも少なくないようです。

もしも、セルフネグレクトの方に対して困っている方は、その方1人で悩むのではなく、地域の相談機関などを頼りつつ、1人で解決しようとせずにグループで対応するようにしていきましょう。

 

精神疾患への予防がセルフネグレクトへの予防になる?

これは精神心疾患にも言えることですが、セルフネグレクトは誰にでも起こりうるものです。大切な家族との別れ、親友との別れ、強いストレスなどはいつ遭遇するかは分かりません。そのため、普段からどのような生活を送っているかで、セルフネグレクトになった後の対応が変わってくるといえるでしょう。

また、強いストレスは精神疾患に陥る危険性もあります。精神疾患にかかった場合、セルフネグレクトへ繋がるリスクもありますので、自分のメンタルヘルスを普段から気を付けていきましょう。メンタルヘルスを守るための方法は以下の記事でも紹介していますので、よろしければこちらの記事もご覧ください。

関連リンク
メンタルヘルスを守るために 心や身体のストレスのサインに気付いていますか?

そして社会的孤立を普段から防ぐようにしましょう。人とコミュニケーションを取るのが苦手で、あまり人と接する機会が少ないという方は少なくありません。ですが、社会的孤立はうつ病になりやすい、メンタルヘルスへ悪影響があるという研究もあります。

外部リンク
参考:筑波大学 社会的孤立を自覚し孤独を感じることが抑うつ症状を高める

また、他者と接することで自分の状態を正しく理解するきっかけにもなります。疲労やストレスが他者から気付きやすい状態となって現れていたり、セルフネグレクトになっていると自覚できない状態でも他者から気付いてもらって悪化する前に防ぐこともできます。

そのためにも、地域の行事に参加してみる、新しいコミュニティへ参加してみる、ボランティア活動をしてみる、地域の相談機関を利用してみるなどをおすすめします。

もちろん無理強いはしません。これは人によって向き不向きがあります。そのため、自分にあった方法で社会的孤立を防ぐようにしていきましょう。

 

【まとめ】うつ病や統合失調症によって引き起こされるセルフネグレクトとは?

今回は精神疾患によって引き起こされるセルフネグレクトについて紹介をしてきました。セルフネグレクトに突然陥ることはなく、いくつかの前兆もあります。(具体例の一部にある物が捨てられなくなって部屋が荒れ始める、身だしなみなどに気を配らなくなった等)

これらの前兆を見逃さずに、もしも周囲に最近様子が変わったなと思う方がいるなら、まずは話を聴くことから始めていきましょう。

そして、本人も気付いていなかった時には医療機関や相談機関などを上手く利用しながら解決の道へ進んでいけると良いですね。

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