精神疾患の方を苦しめる「差別や偏見」とは?

精神疾患にかかった時、症状からくる苦しみはとても大きく辛いものです。精神疾患を治療するために通院し、薬を飲むことで起こり得る副作用、しっかりと休養を取る必要があるため仕事を休むことで感じる他者への申し訳なさなど挙げ出すとキリがありません。

その中でも症状などによる物とは別の方面から本人を苦しめる要素があります。それが「差別や偏見」によるものです。今回はなぜ差別や偏見があるのか、その原因やきっかけ、差別や偏見を無くすために出来ることなどを紹介していきたいと思います。

 

「スティグマ」とも呼ばれる差別や偏見とは?

差別や偏見は「スティグマ」と呼ばれることもあります。精神疾患などを持つ方に対して周囲から否定的な意見や不当な扱いを受けること指します。スティグマの語源はとても古く、古代ギリシアの時代まで遡ります。

この昔から使われている言葉ですが、現代でも申告な問題となるほど根深いものです。この差別や偏見は近隣の住民、全く知らない他者だけではなく、家族や親族、更には医療従事者から受けることも少なくありません。

中にはネガティブな情報やメッセージを受け取ってしまうことで、自分自身をそれに当てはめてしまうケースもあります。そして差別や偏見が与える影響として見逃せないことがあります。それは精神疾患を抱える人は差別を受けるくらいならば、周囲に頼らず病を1人で乗り越えることを選択してしまうことです。適切な治療を早期に行うことで、重症化する前により早く改善に向かうことができると言われていますが、もしも医療機関を頼ることもしなかった場合は本人が苦しむ時間が長引く可能性もあります。

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参考:東邦大学 医療センター スティグマを減らしましょう

 

精神疾患の方へ対する差別や偏見とはどんな物がある?

まずは実際に精神疾患を抱える方が差別や偏見をどれほど受けたことがあるのか見ていきましょう。

こちらは公益社団法人全国精神保健福祉会連合会が2019年12月から2020年1月ごろに行った調査です。これによると総数2,382件に対して、精神障害当事者がいる家族として受ける偏見や差別も含む理不尽な思いを経験した人は720件(約30%)でした。

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参考:公益社団法人全国精神保健福祉会連合会 精神障害当事者の家族に対する差別や偏見に関する実態把握全国調査

この30%を少ないと思うのか多いと思うのかは聞いた人によって印象が変わりますが、私個人としては多いと感じました。

これはあくまでも「精神障害当事者がいる家族の方」が受けた偏見や差別です。では、本人が受けるものはもっと多くなるのではないでしょうか?自分のことや精神疾患について言う機会は、周囲の人よりも本人のほうが多く、その分何か言われることも非常に多いことは容易に想像できることでしょう。

私は身体障害を生まれつきもっています。身体障害といってもぱっと見では他者から分かり辛く、あまり理解を得られないこともありました。また、心無い言葉をかけられた事も少なくありません。完全に理解することはできませんが、精神疾患を抱えている方はこれと同じか、それ以上に様々な理不尽な目に合うことがあると想像することができます。

では、実際にどのような差別や偏見といった理不尽を受けることがあるのでしょうか?あくまでも一部ですが例を挙げていきたいと思います。

精神疾患を抱える方への差別の一例

  • 精神疾患にかかり仕事が続けられなくなり、障害年金をもらうようになって小言を言われた
  • 精神疾患を抱えている人に対して結婚や仕事は無理と決めつける
  • 家族に精神疾患を持つ方がいることで相手の親族に結婚を反対された
  • できることさえも危ないからとやらせてもらえない
  • 支援者に話を聴いてもらえない、治療の説明をされない
  • 子どもが「吐いた息がかかったらうつる」と言われ、友達が飛びのくなど

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参考:障害を理由とする差別事例等について

精神疾患を抱える方への偏見の一例

  • 精神疾患は治らない
  • 精神疾患を持つ人は何をするのか分からなくて怖い
  • 精神疾患を治療する時に使われる薬などは依存度が高い
  • 精神疾患の治療には大量の薬を飲む必要がある
  • 精神疾患は心が弱い人がなる病気であるなど

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参考:新潟市医師会 精神医療に対する誤解と偏見

挙げ出したらキリが無いほどに多くの差別や偏見があります。こういった差別や偏見があることで、精神疾患を抱えている人は社会生活を送る上で余計なストレスに晒されることがあります。

では、なぜこういった差別や偏見があるのでしょうか?

 

差別や偏見の原因やきっかけは?

精神疾患は身体疾患などと違って、見た目では分かり辛いことや、精神疾患に対する法律や制度の整備などが遅れたこと、精神病治療の医学の進歩が遅れたことなどによって様々な誤解が生まれることが多くありました。その誤解によって今でも根強い偏見などが残っています。

また、精神疾患は恥と考える方が少なからずいます。そのため、他者から隠して入院させたり、家の中から出さないようにされたこともあります。もちろん治療のために入院することもありますが、一種の隔離のように使われていた時代もありました。

ただ、これには理由もあり、1964年にライシャワー事件といわれる米国駐日大使ライシャワー氏が、精神科治療歴のある19歳の青年に刺されるという事件もありました。この事件によって精神疾患へのイメージに大きく影響した歴史もあります。

(※ただし、この事件の報道には多くの疑問が残る点もあります)

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参考:障害保健福祉研究情報システム ノーマライゼーション障害者の福祉

こういった歴史や制度や医療の遅れなどが、多くの誤解を生み、結果として現代までも残る偏見や差別のきっかけにもなりました。

 

差別や偏見を無くすために出来ることは?

では、どうすれば精神疾患に対する差別や偏見を無くす、もしくは少しでも減らすことができるのでしょうか?

精神疾患に対して正しい知識を持つことが求められるでしょう。精神疾患は心が弱い人がかかる病気ではありません。普通に生活をしている誰しもがかかりえる病気です。そして精神疾患にかかったら終わりではありません。現代の医療では精神疾患は回復しうる病気だと言われています。適切な治療を早くに行うことができれば、重症化を防ぎつつ回復へ向かうことができると言われています。

また、少しずつですが地域や学校で精神疾患に対して正しい知識を広めるための普及啓発活動などの取り組みが増えています。精神疾患を経験した人と接することで、どういった経緯で精神疾患になったのか、どういった経験をしたのか、大変だったことや辛いこと、今はどのように過ごしているのかなどを聴くことができます。

こういった活動がもっと普及されることで、精神疾患に対して正しく学ぶことができ、将来偏見や差別などを減らしていくことに繋がることでしょう。

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参考:日本精神保健福祉士協会 どうすれば、差別や偏見をなくせるの?

【注目の資格】メンタルヘルス支援士(民間資格)

最後に今注目されている資格「メンタルヘルス支援士」についてご紹介いたします。

メンタルヘルス支援士は一般社団法人 人間力認定協会が認定する民間資格となります。

人間力認定協会は発達障害支援の代表的資格でもある「児童発達支援士」を認定している団体であるため、信頼性は十分にあると言えるでしょう。弊社でも児童発達支援士のノウハウの一部を導入しています。児童発達支援士などの発達障害関連資格の累計受講者数は4万名を超えているようです。(2025.2現在)

メンタルヘルス支援士は発達障害関連の資格というわけではなく、その名の通り「メンタルヘルス(心の健康)」を向上させることを目的とした資格となっています。メンタルヘルス支援士講座で学べる内容は、以下のようになっています。

  1. 精神疾患に関する基礎知識
  2. 発達障害と精神疾患・依存症の関係性
  3. 認知行動療法の種類と基礎知識
  4. カウンセリングの基本姿勢
  5. カウンセリングに役立つ心理学テクニック

この資格に内容や難易度が類似する資格としては、キャリカレの「メンタル心理カウンセラー」があげられます。その際の違いという点では、発達障害やその二次障害との関連性を学べる点と言えるでしょう。発達障害の専門資格を扱っているだけあり、そこは強みの一つのようです。

またメンタルヘルス支援士は「DSM-5TR」に基づいた表記がされていることも特徴の1つです。DSMというのは、アメリカ精神医学会が発刊している医学書のことですが、2022年に最新版となる「DSM-5-TR」が発刊されました。それまでは2013年に発刊された「DSM-5」という医学書がベースとなっていました。およそ9年ぶりに情報が更新されたのですが、その最新情報に対応している資格だということです。精神疾患や発達障害関連の研究は現在も進んでいるため、学ぶのであれば新しい情報であるにこしたことはないでしょう。DSM-5-TRでは、より差別感のでない表現や理解しやすい表現が重視されているので、受講する際にも気持ちよく学ぶことができるのかもしれません。興味のある方は下記より特設サイトをご覧ください。

外部リンク
人間力認定協会|メンタルヘルス支援士 特設サイト

[メンタルケア資格]メンタルヘルス支援士の内容や試験概要をご紹介

【まとめ】精神疾患の方を苦しめる「差別や偏見」とは?

今回は精神疾患を抱える方を苦しめる差別や偏見について紹介をしてきました。悲しいことですが、差別や偏見は精神疾患に限らず、人種や性別、肌の色、言葉が違う、どのようなことでも挙げられます。

この根本にある物は誤解から生まれることもあれば、その歴史など様々な事柄から生まれるものもあるため中々改善が難しいものもあるでしょう。

ですが、精神疾患に関しては正しい知識を学び、インターネットを始めとした様々なメディアの情報に踊らされないようにすること少しずつ減らしていくことができるでしょう。もしもこの記事を読んだ方が、精神疾患に対しての誤解が無くなり、偏見や差別が少しでも減ることに繋がったらとても嬉しく思います。

メンタルヘルス支援士

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