ADHD(注意欠陥・多動性)の30%がうつ病(気分障害)を併存している!?

ADHD(注意欠陥・多動性)の子供は、周囲からの理解を得られないことがよくあります。それはこの障害の特徴が、小さな子供に親が言い聞かせるようなことが出来ないといった特性があるからです。具体的には「片付けなさい」「人の話を聴くときはしっかり座るの」「今はこのことに集中しなさい」などなど。これらが出来ないがために、あらゆる人に基本的なことを注意され続けます。

すると、子供の自己肯定感が低下していきうつ病等の気分障害に繋がっていきます。ADHD(注意欠陥・多動性)の子供は他にも併存障害がいくつかあるため紹介します。

ADHD(注意欠陥・多動性)の30%がうつ病(気分障害)を併存している!?

ADHD(注意欠陥・多動性)の併存障害の一覧を紹介します。

  • 不安障害(25%)
  • 気分障害・うつ病(30%)
  • 行為障害・反抗挑発性障害(30%~50%)
  • 学習障害(LD)

代表的なものは以上です。

外部リンク
【協会監修】ADHD・自閉症診断テスト|子ども発達障害チェックリスト

不安障害

発達障害の方は不安障害を合併する率がかなり高いことが分かっています。自閉スペクトラム症の子供は、一般社会の中にいると、自分だけ異質(違うもの)と感じることがあり、不安感が高まり、不安障害を発症しやすいと考えられます。

ADHD(注意欠陥・多動性)の子供は、脳内報酬系の活性が低い傾向があるため、脳内報酬系が刺激されているときはまだいいのですが、刺激が乏しくなると途端に不安を感じやすくなり、不安障害を発症しやすくなると考えられます。

発達障害にともなう不安障害の場合には、一般の不安障害とは原因が異なるため、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬剤)の効果はあまり期待出来ません。そのため薬ではなく、認知行動療法や集団療法を中心に治療を行った方がよいと思われます。ADHDの場合には、そもそも依存症になりやすいため、ベンゾジアゼピン系薬剤の投与は危険とされています。

気分障害・うつ病

ADHD(注意欠陥・多動性)の子供がなるうつ病は通常のものとは違い、「新型うつ病」と言われるものです。

「新型うつ病」は、仕事の場面では、抑うつ気分、不安、焦燥、意欲低下などうつ病の症状が目立ちますが、仕事以外の場面では比較的症状が目立たないというものです。

「新型うつ病」は、実は発達障害の二次障害と考えられるケースが多いです。発達障害の特性であるコミュニケーションの障害や社会性の障害、感覚過敏などにより日常生活や仕事に適応できず(本質は適応障害)、二次的にうつ状態に陥っていると考えられます。そのため、薬物療法は最小限にとどめ、認知行動療法的アプローチを行う方が効果が上がりやすくなります。

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反抗挑発性障害

反抗挑発症のある子供は、頑固で気難しく、人の言うことを聞かず、怒りっぽくなりますが、身体的攻撃性や実際に他者の権利を侵すことは基本的にありません 。就学前や青年期初期の子供の多くは、ときおり反抗的な行動をとるものですが、反抗挑発症と診断されるのは、反抗的な行動が6カ月以上続いていて、対人関係や学業成績に深刻な影響を及ぼしている場合だけです。

この6か月というのは、発達障害の診断時によく使われる基準値ですね。子どもは成長とともに変化があるため、1・2か月継続したからと言って、あまり不安に思わないようにしましょう。

また反抗挑発症が起こる原因は解明されていません。大人が大声で口論する家庭の小児によくみられると言われています。これが事実ということではありませんが、そのような傾向があるといわれているので、ご夫婦の関係や子育て時の声掛けの仕方には十分注意が必要です。

反抗挑発症の症状はほとんどの場合、就学前から中学生までの時期に現れます。
反抗挑発症の子供に典型的にみられる行動としては、以下のものがあります。


・成人と口論する
・すぐにカッとなることが多い
・積極的に規則や指示に逆らう
・わざと人を困らせる
・自分のミスを人のせいにする
・頭に血が上り、怒りっぽく、すぐイライラする
・悪意に満ち、意地が悪い


MSD マニュアル家庭版より引用

学習障害(LD)

学習障害については、以前の記事でまとめてありますので、そちらをご確認ください。ADHD(注意欠陥・多動性)の子供の場合、学習障害の中でも「ディスレキシア」が発症することが多いといわれています。

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ADHD(注意欠陥・多動性)の治療に有効な集団療法

これらの主な治療法としては、行動管理法と集団療法がよくあげられます。

行動管理法とは、何が正しいのかをその場その場でしっかりと修正して、正しいことをしたときのインパクトを与えるもの。簡単に言えば少し大げさに誉めたり、ご褒美を上げたりするということです。

集団療法は、同じような症状を持つ人間が集まりそこで互いに話をすること。同じ特徴を持つ者同士が、共感したり他者を自分の写し鏡として見ることができます。その中で気づきを得ていくというものです。当然気持ち的に楽になることが想像できます。そのためここで紹介した不安障害や気分障害に繋がる可能性を軽減させることができます。

集団療法の詳細を日本臨床心理会のページより引用しましたのでご覧ください。

通常10人前後の小集団を対象として、参加するメンバーの各々が自分を語ることを通じて実践される心理療法のひとつです。多くは同じ問題を抱えるひとたちや、同じような立場のひとたちを集めて行われます。


自分の姿は鏡を使わないと見えません。グループ療法は他者を鏡にして自分を知り、ひとりで体験すること以上の知恵を得ることができます。


集団の中には必ずさまざまな力動=相互作用が生まれます。それは、共感・受容・同一視・普遍化・転移・現実検討・競合といったものです。セラピストはこれらの力動を使ってそのグループの成熟を促し、同時に参加しているメンバーの個々の成長を助けていきます。


何を語っても良い自由な雰囲気が保たれていると同時に統制も取れていて、セラピストによって場が保護されていることが求められます。メンバーは他のひとの話をしっかりと聞き、自分の内面を正直に語り、自分の話が受けとめてもらえていると信頼していることが必要です。

一般社団法人 日本臨床心理会より引用

私はこれをみて、「何を語っても良い自由な雰囲気が保たれている。かつ統制も取れている」という部分がとても重要だと感じました。この環境を実現するのはなかなか難しいものです。まず学校では無理でしょう。人数が多すぎるのと、正解を求められる雰囲気のある場だからです。学習塾はどうでしょう。一般的な塾では難しいですね。となると発達障害児専門の施設しか残りません。しかし発達障害児施設だと子供が中学年以上になった際、劣等感に繋がらないようにする工夫は必要です。

「自分は発達障害でダメなんだ」

このようにならぬよう気を付けましょう。周りの友達からは、ひどいことを言われるかもしれませんが、それに負けぬくらい保護者が子供の自己肯定感を守り高めてあげて下さい。

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